医療経営プロフェッショナル柴田雄一「ニューハンプシャーMC」

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4価インフルエンザワクチンとプライシング (92)

変わる予防接種

クライアント先の医療機関と例年よりも早い時期にあるテーマについて、議論を開始しています。それは、インフルエンザワクチン予防接種の価格設定です。本連載でも何度か取り上げているように、インフルエンザワクチンの予防接種を行っている医療機関では、自院の戦略に合致するように、毎年議論して価格を決定する必要があります。競合となる他の医療機関の動向を見る限りでは、毎年のように見直しをかけて、変更する医療機関はそう多くはありません。

しかし、今年は状況が大きく変わります。すでにご存知とは思いますが、インフルエンザワクチンの原価が上がることが予定されています。その額は1.5倍程度ともいわれています。その理由は、これまではA型が2種類とB型が1種類の3種類(3価)であったのが、今年からB型の抗原が2種類に増えて4種類(4価)のワクチンになったからです。4価ワクチンの供給に一斉に切り替わるため、安価の3価ワクチンを打ちたいと患者が要求してきても、対応できません。

アメリカでは、「3価ワクチン注射 A型2種類+B型1種類」、「4価ワクチン注射 A型2種類+B型2種類」、そして「フルミスト(4価ワクチン、点鼻、生ワクチン) A型2種類+B型2種類」の3種類が販売されており、患者が希望するワクチンを選択できるとのことです。日本でも、フルミストの摂取ができる医療機関が一部にあるとはいえ、ワクチンの有効性、安定供給体制、大量生産による原価引き下げなど、さまざまな専門家の議論を経て、4価ワクチンに絞った形になっていると考えられます。いずれにしても、原価が上昇しますので、価格に反映されることになります。となれば、消費者の行動に大きく影響します。 

原価上昇による医療機関の次の行動

インフルエンザワクチンの予防接種は、国や地方自治体の助成事業の対象となります。しかし、卸価格も本稿執筆中にはまだ確定していないため、誰にいくらの助成が出るのかは決まっておらず、どの程度の変化があるかは分かりません。とはいえ、いずれにしても、2回の接種が必要な小児や、年金で生活する高齢者にとって、相応の負担が発生することは否めません。消費者はワクチンの価格に対し、いつも以上に敏感になってきます。よって、医療機関の経営に影響が出てくる可能性も例年と比べて高くなります。

この場合の価格設定は、3パターンとなります。

①原価分以上に上乗せ(実質値上げ)
②原価分のみ上乗せ
③価格据え置き、もしくは原価上昇分よりも抑えた額を上乗せ(実質値下げ)

①を選択するケースを考えてみます。実質の値上げとなりますが、他の医療機関が原価分のみ上乗せ(②)した場合、大きな上乗せでなければ、患者にとっては②との区別がつきません。同じ人数に接種するのであれば、②に比べて粗利益が高くなります。例えば、予防接種を希望する患者が急増し、それ以外の毎月来院する慢性疾患の患者が減少することがありますので、経営戦略上、特定の患者数を抑制したい、スタッフの労務を軽減したいといった場合にも、①を選択することになります。小児患者数を抑制したい場合にも採用します。

②では、粗利益は現状維持となりますが、値上げにより予防接種が抑制されれば、摂取数は減ることになります。

③については、開業から間もないなど、患者数の増加を目的とする場合に選択します。他の医療機関よりも価格を抑えることで、今まで来院したことがない患者に足を運んでもらえるかもしれません。薄利多売によって、粗利益は増える可能性があります。ただし、どこの世界にもバーゲンハンター(バーゲンのみ狙って利用する、固定患者にはならない層)が存在することを考慮したうえで採用する必要があります。この機会に、戦略的なプライシングをしてみてはいかがかでしょうか?

株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一