医療経営プロフェッショナル柴田雄一「ニューハンプシャーMC」

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出した利益の使い方 (74)

見逃す課題

ある製薬企業から声がかかり、その企業との付き合いがある開業医に向けの講演を全国各地で行っています。当然ですが筆者が話す演題テーマは経営に関することです。地域によって20人から50人くらいまでの幅で参加者が集まりますが、その大半が経営に関する講演を初めて聞く先生です。医業経営は営利を追求するものではありません。よって開業医が経営に比重を置きすぎて探求することが良いとは決して思いません。しかしながら、開業医も経営者です。この講演後の懇親会などで参加者とお話しすれば、共通の課題や悩みを持っています。とはいえ、それを解決するための手段も知らずに放置していたり、課題を抱えたままとなっていたりしています。全国を周りながら経営者として知っておけばもっと役に立つことがたくさんあると感じている今日この頃です。 

だからといって、その役に立つ知識とは何かと一般論で問われてしまうと少々答えに困ります。なぜならば、経営といってもその分野が多岐にわたります。財務、税務、法務、人事労務、マーケティング、戦略……と話題に事欠きません。またその開業医の経営環境によっても、必要な知識は変わってきます。本連載も経営をテーマに今回74回目を迎えたわけですが、まったくもってネタ切れを心配する必要はないくらいです。 

これまで取り上げてきたテーマは、時事的な経営コラム、そしてクリニック経営者として最大公約数的に直面するであろう問題や課題への対応策となります。前者はコラムですから、そんなものかと感じていただければよいのですが、後者はそうもいきません。なぜならば、その問題にぶつかる可能性が高いからです。とはいえ、そこに問題意識がなければ見逃してしまうことが多いのも事実です。例えば“節税”は、経営が安定してくれば一つの課題として挙がってくるものです。年々増えてくる納税額を見れば、そこに意識をもっていかれるのも当然のように思います。ただ、意外と何もしていない開業医は少なくありません。何かあれば税理士がアドバイスをくれるだろうということで見逃してしまい、同じような医業収入を得ながらも知識の有無と行動の差で将来残る資産が大きく異なってしまいます。

使い方の指針

今回も見逃しがちなテーマを扱ってみたいと思います。タイトルの通り「出した利益の使い方」です。出た利益をそのまま最高税率できっちり納税して税引き後現預金を貯めていくというのも、個人クリニックにとっては一つの選択肢です。とはいえ経営としては、効率的とはいえません。院長先生にお伺いします。「出した利益の使い方」について、基本的な計画や指針をお持ちでしょうか? この問いに今まで明確に答えられた先生はいません。これの指針を持つか否かで、節税と同じく、将来的に大きな差が生じてくることになります。そこで標準的な指針を示します。 

① 医療の質向上への投資 
② 新規患者獲得への投資 
③ 職員への投資 
④ インフラへの投資 
⑤ 患者満足度向上対策への投資 
⑥ クリニックと相乗効果のある新規事業 

ここに含まれているすべてにおいては、投資すればすぐに成果にあらわれるものではありません。ある程度時間を必要とするものばかりです。医療の質については、医師という職業柄ここに挙げる必要もないのかもしれません。次に、経営安定化のためには一定の新規患者を獲得しておく必要もあります。また、中でも意外と漏れているのが、職員への投資です。ほぼ人に依存するのが医業です。スキルの高い職員の獲得にかかる費用、プラスαの人件費(手当・報奨)、職員の教育訓練費用などがあり、予算を決めて積極的に投資することが将来のリターンを生み出します。これをベースに自院の指針を考えてみてはいかがでしょうか? 

株式会社ニューハンプシャーMC 
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一