医療経営プロフェッショナル柴田雄一「ニューハンプシャーMC」

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自院経営を客観視する③(257)

強みと弱み

自分を見つめ直すこと、また自分を客観視することで、視野が広がり多角にかつ冷静に物事を見ることができるようになります。そこでまずは財務の観点から収益性、効率性、生産性、安全性、成長性を定量的に把握する方法を前々回ご案内しました。次に定性的に評価する手法としてSWOT分析について前回ご紹介しました。そこで自分ではコントロールできないOpportunity(機会)とTreat(脅威)の外部環境の分析における着眼点(競合、市場、政治、社会、経済、技術)について前回説明しました。そして今回は内部環境となる自院のStrengths(強み)とWeakness(弱み)について触れていきます。 

自院の強みと弱みを教えてくださいという質問で、よどみなく何個もスラスラでてくるようであれば、それはすでに自院を客観視できている人です。普通は数個出たとしてもそれ以上はなかなか出てこないものです。そこで着想点としてのフレームワークを使います。自院の強みと弱みとは、経営資源における競合他院と比べて優るところと劣るところになります。経営資源とは、いわゆる「ヒト、モノ、カネ」です。 

まず「ヒト」とは組織に利益などの付加価値を生み出す人材です。病医院は労働集約型の産業と言われており、基本的には医師、看護師、薬剤師、技師、などの有資格者や医療事務やその他多くの職種の専門知識を持った人々によって営まれています。それこそ医師の専門領域が病医院の機能となりそれが経営資源となり競合他院との差別化要因や機能分化となって地域の中での役割を担うこととなっていきます。地域の中で同じ機能や専門領域を有する病医院がその需要を越えて存在することは非営利であっても民間組織においては公共事業でないので、存続することはできません。自院には誇れるほどの強みがないと嘆く経営者に結構出会います。果たしてそうでしょうか。そこで存続している以上、何らかの役割が回ってきており、地域医療の機能の一つを担っています。 

判断基準はあくまで競合

次に「モノ」です。建物や医療設備や機器類、医薬材料などの物的資産です。ローカルビジネスと言われる地域と密接につながっている業態となる医療機関は、立地は経営に大きな影響を及ぼす要因であり重要な経営資源となります。それが強みにもなり、弱みにもなりえます。立地自体を変えることは通常できません。とはいえ、強みならばそれを活かす方法を考え、また弱みとなるのであればそれを補う別の手段を考えていく必要があります。 

更には「カネ」となりますが、ここでは運転資金や投資するために必要となる資金力という有限の経営資源を最大限活かして更に付加価値を生み出すことが経営者としての命題となってきます。自己資金に余裕があったり、銀行など金融機関からの資金調達が可能であったりすれば、それこそ経営資源へ投資する余裕が生まれます。財務の視点で自院を分析していきます。また最近では、この3つ資源の他にもう一つ「情報」を追加した4つ「として語られることが多くなりました。これは無形の経営資源全般を示しています。例えば、組織が持つノウハウや、顧客のデータ、特許や著作権、商標権など法的に保護された知的財産、また顧客とのネットワークやブランド価値なども付加価値を生むために必要な経営資源となってきます。 

普通のクリニックだし、誇れるほどの強みがないとの声を良く聞きます。謙遜されているのかもしれませんし、本当にそう感じられているのかもしれません。いずれにしても、そう言った時には比べているところが大学病院や地域の中核病院などそもそも機能の違う医療機関や全国の同じ標榜を掲げているクリニックであったりします。だから自院のホームページに載せるほど誇示できるほどのことではないという認識なのかと思います。しかし、あくまで判断基準は競合ですので、それを念頭にリストアップしてみてください。次回は、SWOTを組み合わせた分析方法を紹介します。 

株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一