クリニック経営・開業支援
病院経営支援
公式サイト
トップコラム病院経営に必要な資格は?有利な資格や役立つスキルを解説

病院経営に必要な資格は?有利な資格や役立つスキルを解説

コラム

2025.09.17

病院やクリニックの経営を目指すとき、「医師免許がなければ経営はできないのか」「実際に役立つ資格やスキルは何か」と疑問に思う方は多いでしょう。医療は専門性の高い分野ですが、同時に組織運営や財務管理といった経営の視点も求められます。そのため、医療に関する資格だけでなく、経営に有利な知識やスキルを理解しておくことが重要になります。
この記事では、病院経営に必要な資格や役立つ関連資格、さらに日常の運営で活かせるスキルまで解説します。病院経営を真剣に考える方にとって、準備の指針となる内容ですので参考にしてください。

病院経営に必要な資格とは

病院を経営するには、医療法などの法令で定められた要件を満たす必要があります。特に医師免許は病院開設に直結するため、欠かせない資格となります。ただし経営に関わる立場が必ずしも医師である必要はなく、法人経営の形をとる場合には非医師も関与することが可能です。
ここでは病院経営に不可欠な資格や法的根拠について整理します。

医師免許と病院開設の関係

病院を新設する際、開設者は原則として医師であり、医師免許の有無が開設の大前提となります。医師が開設者や理事長として責任を担うことで、診療の質や安全性を確保できるためです。
ただし、医療法人の形式をとる場合には経営者が必ずしも医師である必要はありません。その場合でも診療を担う責任者は医師でなければならず、免許を持つ人材の確保は不可欠です。実際には、非医師が経営や財務を担い、医師が診療責任を負う形で役割分担を行うケースが多いといえます。

医師以外が経営に関わる場合の資格

経営者や出資者が必ずしも医師免許を持つとは限りません。資金提供者や事務系の責任者が経営に参画することは可能ですが、診療部門の責任は必ず医師が負う必要があります。
また、経営に関与する立場であれば法務や会計に関する知識が不可欠であり、資格を持っていれば経営の安定性や信頼性が高まります。特に非医師が関わる場合には、医療法や法人運営の仕組みを理解しておくことが円滑な経営につながります。

資格が求められる法的根拠

資格が必要となる背景には医療法や医師法、歯科医師法などの法律があります。診療行為を行うには必ず該当する国家資格が必要であり、看護師や薬剤師など他職種も同様です。
さらに、病院開設時には保健所や厚生労働省に資格保持者の関与を示す書類を提出する必要があり、資格の有無が審査の対象となります。無資格のままでは開設できないため、法的な仕組みを理解しておくことが安定した経営の基盤となります。

病院経営に有利な資格一覧

必須ではないものの、取得しておくと病院経営に大きなメリットをもたらす資格があります。これらは経営判断の幅を広げ、組織の信頼性を高める助けとなります。
代表的な資格には医療経営士、MBA、中小企業診断士、税理士、社会保険労務士、医療情報技師などがあり、それぞれ異なる分野で経営を支援します。

医療経営士の特徴と活用シーン

医療経営士は、一般社団法人日本医療経営実践協会が認定する民間資格で、医療機関の経営改善に特化した専門性を証明できます。1級から3級まで段階があり、3級では基礎的な医療制度や経営知識、1級ではより高度な戦略立案や人材マネジメントまで幅広く学べます。資格取得により診療報酬制度や地域医療連携、経営指標の読み方といった実務に直結する知識を体系的に身につけられるのが大きな特徴です。実際には病院の事務長や経営企画部門のスタッフが取得するケースが多く、組織内で経営改善をリードする役割を担います。
さらに医師自身が取得することで、診療面と経営面を両立できる視点を持ち、病院全体のバランスを取る力を強化できます。外部コンサルタントに依存しすぎずに自走できる組織づくりに直結する資格といえます。

MBAや中小企業診断士の強み

MBA(経営学修士)は世界的に評価される学位で、財務、マーケティング、組織論、リーダーシップなど経営に必須の知識を体系的に学べます。医療機関でMBAホルダーを採用するケースも増えており、収支改善や事業戦略の立案に直結する点が強みです。また、医療法人の理事長や院長が取得することで、医療の専門性に経営の視点を加えられ、組織の意思決定力が高まります。
一方、中小企業診断士は経営コンサルタントとして唯一の国家資格であり、経営戦略立案、資金繰り改善、人材育成など幅広い領域で活用できます。診断士は国や自治体の公的支援制度にも関与するため、補助金や助成金の申請を進める際にも役立ちます。MBAは理論と国際的な経営スキルを学ぶ点に強みがあり、中小企業診断士は国内での制度や中小規模病院の経営改善に直結する実践的な力を発揮します。どちらも必須ではありませんが、将来の分院展開や経営規模拡大を考える病院にとって心強い選択肢といえるでしょう。

会計・財務管理に関連する資格

資金繰りや労務管理を適切に行うには専門的な資格を持つ人材の力が欠かせません。税理士は税務申告や節税対策を行い、医療法人特有の会計処理もサポートします。
社会保険労務士は給与計算や社会保険手続きを担当し、労務管理を安定させる役割を担います。これらの専門家が経営に関わることで、医師が診療に専念できる環境を作り出すことが可能となります。

税理士

税理士は法人税や所得税の申告を担う国家資格であり、病院経営において財務の健全性を維持する重要な存在です。医療法人は一般企業と比べて会計処理が複雑で、特に診療報酬や補助金に関連する収支管理には専門知識が欠かせません。税理士のサポートを受けることで、適切な節税や資金繰りの改善が可能になり、無駄な出費を抑えることにつながります。
また、金融機関から融資を受ける際には事業計画書の信頼性が重視されるため、税理士が関与することで説得力のある計画を提示でき、資金調達が有利になります。長期的に見ても、税理士は経営戦略のパートナーとして不可欠な存在といえるでしょう。

社会保険労務士

社会保険労務士は職員の労務管理や社会保険手続きを専門とする国家資格で、病院の人事体制を整えるうえで大きな力を発揮します。特に病院は医師や看護師、薬剤師、事務職員など多職種が勤務するため、労働時間や勤務形態も複雑になりやすいのが現実です。社労士が関与することで、労働基準法や社会保険制度に則った正しい管理が行え、労務トラブルを未然に防ぐことができます。
さらに、就業規則の整備や働き方改革への対応といった制度面でのアドバイスも得られるため、安心して働ける職場づくりにつながります。結果としてスタッフの定着率が向上し、病院全体の医療サービスの質を安定的に高めることができます。

情報管理やIT分野の資格(医療情報技師)

近年の病院経営では電子カルテや医療情報システムの導入が進み、ITスキルの有無が経営に直結するようになりました。その中でも医療情報技師は、医療と情報技術の両方に精通している専門資格であり、電子カルテの運用や個人情報保護、システムトラブル対応など幅広い役割を担います。
病院で一度システム障害が発生すると診療業務全体に支障をきたすため、専門知識を持つ人材の配置は不可欠といえます。
さらに、医療情報技師が関与することで、情報管理の安定化に加え、診療報酬請求やデータ分析による経営改善にもつながります。デジタル化が進む医療業界において、病院経営を支える重要な資格のひとつです。

病院経営で役立つ実務スキル

病院経営には資格に加えて、日常の運営を支えるスキルが求められます。財務管理、人材マネジメント、コミュニケーション能力などは、資格だけでは補えない実務力です。
これらのスキルを磨くことで、より強固で柔軟な経営体制を築くことが可能となります。

財務管理や会計知識

病院を安定的に経営するためには、日々の収支を把握し、将来の投資や支出を見通す力が欠かせません。財務諸表を読めるようになると、赤字や黒字の要因を早期に把握でき、迅速な経営判断につながります。また、医療機器の購入や新しい診療科の開設など、大きな投資を行う際には資金回収までのシナリオを立てる必要があります。
基本的な会計知識を持っていれば、外部の専門家に依頼する際にも意図を伝えやすくなり、無駄なコストを抑えることが可能です。財務を理解することは病院の健全性を維持するだけでなく、職員や金融機関からの信頼にもつながります。

人材マネジメントとリーダーシップ

病院は医師や看護師、薬剤師、事務職員など多くの職種で成り立ちます。経営者には、それぞれの専門性を尊重しながらチームをまとめる力が求められます。採用段階ではスキルだけでなく人柄や価値観も見極め、採用後には教育研修を通じて成長を促すことが重要です。
また、リーダーシップを発揮して現場と経営陣の橋渡しを行うことで、スタッフの声が反映されやすくなり、働きがいのある職場環境をつくれます。職員が安心して力を発揮できる環境が整えば、離職率を下げるだけでなく、結果として患者への医療サービスの質向上にも直結します。

コミュニケーション能力と患者対応力

患者やその家族と信頼関係を築くことは、病院経営の大きな基盤となります。診療内容を分かりやすく説明する力や、不安を抱える患者に寄り添う姿勢は、病院全体の評価にも直結します。さらに、地域住民との交流や自治体との連携においても円滑なコミュニケーションが求められます。
経営者自らが積極的に地域活動に参加することは、病院の知名度や信頼を高める効果があります。コミュニケーション能力を高めることは、患者数の安定につながるだけでなく、地域に根差した病院づくりにも欠かせない要素といえるでしょう。

病院開業時に意識しておきたいポイント

病院を開設する際には、資格やスキルのほかに資金や行政手続きの準備が必要です。資金計画を誤ると開業後の経営が不安定になる可能性があるため、事前にしっかりとした準備を行うことが大切です。
ここでは資金や手続きに関する具体的なポイントを取り上げます。

開業資金の目安と調達方法

病院開業に必要な資金は診療所で数千万円規模、一般病院では数億円規模に達することもあります。設備投資や建物費用に加え、開業後の運転資金を半年分ほど確保しておくことが望ましいといえます。
自己資金に加え、銀行融資や補助金を活用して複数の資金源を確保することが安定した経営につながります。

自己資金と融資のポイント

自己資金は金融機関からの信頼を得るために重要であり、一般的に開業資金の2〜3割を準備しておくと安心です。自己資金が十分にあることで、返済負担を軽減できるだけでなく、融資審査の通過率も高まります。融資を受ける際には、金融機関が重視するのは事業計画の現実性と返済能力です。
特に診療科ごとの収益予測、人員計画、地域医療ニーズに即した戦略が盛り込まれているかが評価されます。複数の金融機関に相談して条件を比較し、金利や返済期間を含めた最適な資金計画を立てることが経営の安定につながります。

補助金・助成金の活用

国や自治体が提供する補助金や助成金を活用すれば、開業時の負担を大幅に減らせます。代表的なものには、地域医療体制を支援するための「医療施設整備補助」や、雇用を促進するための「人材確保等支援助成金」などがあります。これらは返済不要である点が大きなメリットですが、申請には詳細な事業計画書や財務資料が必要で、採択率も制度によって異なります。
また、募集時期が限られているため情報収集を怠ると機会を逃す可能性があります。専門家や商工会議所に相談しながら準備を進めることで、採択の可能性を高めることができます。

法的手続きと届出の流れ

病院を開設する際には、建物や設備の準備だけでなく、行政への正式な手続きも必ず行う必要があります。特に保健所への届出や厚生労働省への申請は必須であり、期限や提出書類も厳格に定められています。
これらを怠ると診療開始が遅れるだけでなく、罰則対象となる場合もあるため注意が必要です。事前に必要書類や提出スケジュールを把握し、余裕を持った準備を進めることが安定した開業につながります。

保健所への届出

病院を開設する際には、所在地を管轄する保健所へ開設届を提出する必要があります。届出には施設の構造や面積、診療科目、配置する医師や看護師の数など詳細な情報を記載した書類が求められます。
さらに、感染症対策やバリアフリー設備の有無なども確認されるケースがあります。場合によっては実地調査が行われ、基準を満たしていなければ修正や改善を求められることもあります。保健所との事前相談を行うことで手続きが円滑になり、開設準備のスケジュール遅延を防ぐことにつながります。

厚生労働省への申請

病院を保険診療機関として運営するためには、厚生労働省や地方厚生局に対して「保険医療機関」の指定申請を行う必要があります。この申請では診療科目ごとの勤務医師の情報、施設基準の遵守状況、医療安全管理体制などを証明する資料が求められます。
審査を通過して指定を受けることで、患者は健康保険を利用して受診でき、病院としても安定した収益を確保しやすくなります。申請手続きには数か月を要する場合があるため、開業準備の初期段階から申請スケジュールを把握し、余裕を持った対応を進めることが大切です。

開業後の運営に必要な視点

開業を終えた後も、病院を安定的に運営するためには組織体制の整備が重要です。特にスタッフ採用や教育、地域への情報発信は、長期的な経営に大きく影響します。
経営者がこうした取り組みを継続することで、病院の信頼性や地域医療への貢献度を高められます。

スタッフ採用と教育

病院の運営において人材は最も大切な資源のひとつです。採用時には即戦力となるスキルだけでなく、院内の方針や文化に適した人柄を見極めることが重要です。特に医師や看護師の採用は地域での医療提供体制に直結するため、計画的な人材確保が欠かせません。
採用後は研修やOJTを通じて業務の標準化を図り、職員が安心して働ける環境を整える必要があります。また、キャリアパスを提示して継続的な成長を支援することで、モチベーション向上や離職防止につながります。教育体制の充実は医療の質を高めるだけでなく、病院全体の信頼性強化にも直結します。

集患・マーケティング戦略

開業後に患者数を安定させるためには、診療の質に加えて戦略的な広報活動が不可欠です。まずは公式ホームページを整備し、診療科目や診療時間、医師の専門分野などをわかりやすく掲載することが基本となります。加えて、SNSや地域情報誌を活用することで、病院の存在を幅広い層に知ってもらうことが可能です。
口コミや紹介患者を増やすためには、院内の接遇や患者満足度の向上に力を入れることが効果的です。さらに地域イベントや健康講座を開催することで住民との接点を増やせば、地域に根差した医療機関としての信頼を築けます。こうした取り組みを継続することが、安定した集患と経営基盤の強化につながります。

病院経営を成功させるための考え方

病院を安定的に成長させるには、資格やスキルの習得に加えて経営者としての姿勢が大切です。診療報酬改定や人材不足など変化の多い環境を乗り越えるには、学びを続ける意識や地域との協力、そしてリスクへの備えが欠かせません。
ここからは、病院経営を成功へ導くために押さえておきたい具体的な考え方を紹介します。

資格取得とスキルアップの継続

資格を取得した後も、知識を更新し続ける姿勢が経営の安定に直結します。診療報酬制度は数年ごとに改定されるため、最新情報を把握しておかなければ適切な経営判断ができません。
また、ITや経営分野も進化が早く、新しい知識を取り入れることで業務の効率化やサービス改善に活かせます。学びを継続することで経営者自身の視野が広がり、病院全体を力強くリードできるようになります。

地域医療との連携の重要性

病院は単独で成り立つものではなく、地域の医療ネットワークの一部として存在します。診療所や介護施設、訪問看護との連携を強化することで、患者に切れ目のない医療を提供できるようになります。
さらに、地域住民との交流や健康セミナーを通じて信頼を深めれば、病院の認知度や利用意欲も高まります。地域と協力しながら役割を果たすことが、結果として病院経営の安定や成長につながるのです。

経営リスクとその対策

病院経営には診療報酬改定、人材不足、感染症拡大など多様なリスクが潜んでいます。これらに備えるには、複数の収益源を確保することや、柔軟に対応できる組織体制を築くことが欠かせません。例えば、一般外来に加えて健診や訪問診療を取り入れると、収益構造の安定につながります。
さらに、緊急時の対応マニュアルを整備しておくと、予期せぬ事態にも落ち着いて対応できます。リスクを事前に見据えて準備することが、持続可能な病院経営を実現する大きな力となります。

まとめ|病院経営に資格とスキルを活かす

病院経営には医師免許をはじめとした必須資格があり、さらに経営や労務、情報管理の専門資格を組み合わせることで、組織の信頼性と安定性を高められます。加えて、財務管理や人材マネジメント、患者との信頼関係を築く力など、資格では補いきれない実務スキルも欠かせません。開業時には多額の資金や行政手続きが必要となるため、事前の準備と複数の調達手段を検討することが安心につながります。また、地域との連携やリスクへの備えを強化することで、変化の多い医療環境においても持続可能な経営を実現できるでしょう。
資格とスキルを両立して磨き続ける姿勢は、病院経営を成功に導くだけでなく、地域に信頼される医療機関づくりにも直結します。これから病院経営に挑戦する方は、一歩ずつ準備を重ね、自らの理想とする医療を形にしていきましょう。
開業や継承、集患に悩んでいる方は、ニューハンプシャーMCにご相談ください。
オンラインでの無料相談も行っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせはこちら
また、弊社の考え、ノウハウが凝縮された書籍も販売しております。
弊社にお問い合わせいただく9割以上の方が、本を通じて弊社の考えに共感しお問い合わせいただいております。

この記事を書いた専門家(アドバイザー)

著者情報 newhampshire-media

関連記事

2024.12.15

クリニック開業で後悔・失敗で多いケースは?気をつける点や予防法を紹介

2025.07.24

クリニックの開業準備!開業までの期間や失敗しないポイントを解説

2025.07.24

病院のマーケティング方法は?戦略や効果的な集患方法を解説

2025.07.24

クリニック開業時の資金・事業計画とは?書き方・作成手順などを解説

2025.04.24

医療経営コンサルタントとは?業務内容や依頼するメリット・選ぶポイントを解説

2025.08.21

勤務医と開業医の年収差は?働き方や手取りも詳しく比較

New

新着記事はこちら

Share on