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勤務医と開業医の年収差は?働き方や手取りも詳しく比較

コラム

2025.08.21

勤務医と開業医では、同じ医師であっても年収や手取り、働き方の自由度が大きく変わります。勤務医は安定した給与や福利厚生が整っている一方、収入の上限や診療の裁量に制約があると感じることもあります。反対に開業医は、裁量と高収入を得やすい反面、初期費用や経営リスク、資金繰りの重さを背負う覚悟が必要です。
今回の記事では、勤務医と開業医の年収や手取りの実態、診療科や年代ごとの違い、開業に必要な費用やリスク、そしてライフステージに応じたキャリアの考え方を、わかりやすい数値や事例を交えながら解説します。
医師としてどの道を選ぶか悩んでいる方が、自分と家族に合った働き方を見極められるよう、判断の参考となる視点を丁寧にお伝えします。


勤務医と開業医の年収を徹底比較

勤務医と開業医は、どちらも医師という点では共通していますが、収入の仕組みやリスクの背負い方に大きな違いがあります。勤務医は給与所得による安定性が強みで、開業医は患者数や診療方針の工夫で収益を大きく伸ばせる一方、経費や借入の返済も負担になります。
ここでは、勤務医と開業医それぞれの平均的な年収や手取りの目安を見ていきましょう。


年代別の勤務医の平均年収

勤務医の年収は年代や経験年数に応じて段階的に上昇します。20代は初期研修や専攻医の段階で500〜700万円、30代では専門医資格の取得に伴い800〜1,200万円になる傾向にあります。
40代になると責任範囲が広がり1,000〜1,500万円、50代以降は安定して1,200〜1,600万円に達するケースが一般的です。
以下の表は年代ごとの代表的な目安です。























年代 勤務医の平均年収
20代 500〜700万円
30代 800〜1,200万円
40代 1,000〜1,500万円
50代以降 1,200〜1,600万円

昇給や役職手当の有無、当直回数などで実際の収入は変動します。求人情報を比較する際には「総額」だけでなく「内訳」と「働き方の条件」も確認することが大切です。


診療科ごとの開業医年収

開業医の年収は診療科の特性によって大きく異なります。患者のリピート性や自費診療の導入余地が高い診療科は収益が伸びやすく、一般診療中心の診療科は安定性がある一方で収入は中庸になりがちです。
以下の表は代表的な診療科ごとの平均的な年収の目安です。











































診療科 開業医の平均年収
内科 2,400万〜2,800万円
小児科 3,000万〜4,000万円
精神科 2,100万〜2,600万円
外科 2,000万〜3,000万円
整形外科 2,800万〜3,500万円
産婦人科 3,500万〜4,800万円
眼科 2,500万〜3,500万円
耳鼻咽喉科 2,000万〜3,000万円
皮膚科 2,700万〜3,000万円

診療科選びは将来の収益性に直結します。自由診療メニューの導入や診療時間の工夫など、経営判断次第で伸び幅を作れる点も特徴です。開業を検討する際は、医療需要と自分の専門性を重ね合わせて検討することが重要です。


地域による医師平均年収の違い

医師の年収は地域によっても差が出ます。都市部は患者数が多い一方で競合や固定費が大きく、地方は医師不足によって高額な報酬が提示されることがあります。
以下の表は代表的な地域での医師の平均年収の目安です。



























都道府県 医師平均年収
福井県 3,800万円
山口県 3,600万円
徳島県 3,500万円
千葉県 3,400万円
三重県 3,300万円

同じ都道府県でも都市部か郊外かで結果は大きく変わります。患者層や交通手段、競合状況を踏まえ、立地条件を慎重に見極めることが収益性を安定させる第一歩です。


診療科別の勤務医と開業医の年収比較

勤務医と開業医の収入差は診療科によっても大きく変わります。勤務医は安定した給与体系が特徴で、開業医は患者数や経営判断で大きく伸ばせる余地があります。以下の表では代表的な診療科を取り上げ、両者の平均的な水準を比較しています。

































診療科 勤務医平均年収 開業医平均年収
外科 1,600万〜1,900万円 2,500万〜3,500万円
整形外科 1,700万〜2,000万円 2,800万〜3,500万円
皮膚科 1,200万〜1,500万円 2,700万〜3,000万円
眼科 1,300万〜1,600万円 2,500万〜3,500万円
精神科 1,000万〜1,200万円 2,100万〜2,600万円

表からもわかる通り、勤務医に比べ開業医は収入の上振れ幅が大きい一方で、診療科によっては初期投資や競合状況の影響を強く受けます。勤務医は収入が安定しており、長期的な福利厚生も確保しやすい点が魅力です。
将来的にどちらを選ぶかは、安定性を優先するのか、リスクを背負ってでも収入や裁量を求めるのかという価値観によって変わります。


勤務医と開業医の働き方とワークライフバランス

同じ医師でも、役割と責任の置き方で1日の流れが変わります。勤務医は診療に集中しやすく、開業医は診療と運営を両輪で回します。次の小見出しで、働き方の特徴と向き不向きを生活目線で解説し、負担を軽くする工夫にも触れます。


勤務医の働き方とメリット・デメリット

勤務医は病院や診療所に所属し、外来・病棟・救急・手術・カンファレンス・書類業務を分担します。
収入と制度が安定し、研究や教育の機会も得やすい反面、当直やオンコールで生活リズムが乱れる時期があります。シフト調整や外来専従、時短勤務などの選択肢を活用すると、家庭事情に合わせた働き方へ寄せられます。転職や異動で環境を変えやすいのも利点です。
一方で診療の裁量は組織方針に影響されやすく、年収の天井は見えやすい傾向にあります。就職時は当直回数、翌朝勤務の免除、残業代の算定方法まで確認しておくと安心です。


開業医の働き方とメリット・デメリット

開業医は診療に加え、採用・教育、会計、物品・機器管理、広報、行政対応まで舵取りします。診療時間やメニュー、価格、予約枠を自分で設計でき、地域の需要に合わせた拡張も可能です。うまく回れば収入と時間の自由度が増しますが、開業初期は雑務が多く休みが圧縮されがちです。
体制が整えば業務の標準化と権限委譲で負担は下がります。数値(来院数・単価・再診率・人件費比率)を月次で点検し、待ち時間や動線を継続改善すると、働きやすさと収益が同時に向上します。
突発対応の負荷を下げるには、代診体制と外部ネットワークが支えになります。


ライフステージに応じた働き方の違い

子育てや介護、学費のピークなど、暮らしの節目で適した形は変わります。育児期は勤務医の時短や当直調整が取りやすく、産休育休や復職支援も後押しとなります。臨床経験が厚くなり、人脈や紹介の流れが安定する40代以降は、開業で裁量と収入の両面を伸ばしやすい時期です。
開業を選ぶ場合は、自己資金と借入、家賃、人件費、機器リースを踏まえ、返済と来院数の立ち上がりを合わせる設計が重要です。どの段階でも、1日の時間割と年間の休日、可処分所得を数値で見える化すると、家族と同じ景色で話し合えるようになります。


開業医のメリットとデメリット

開業は収入の上振れと裁量の広さが魅力ですが、固定費や採用、資金繰りなどの重さも伴います。偏りなく捉えるため、良い面と注意点を分けて確認します。次の小見出しで、現場で実感しやすい具体像に落として解説します。


開業医のメリット

診療時間や予約枠、診療メニュー、価格を自ら設計でき、地域の需要に合わせて迅速に打ち手を変えられる点が強みです。待ち時間の短縮や検査の回転率向上、スタッフ育成に投資すれば、来院体験の満足度が上がり紹介が増えます。
自由診療や健診、在宅の組み合わせで収入の柱を複線化でき、季節変動への耐性も高まります。利益の設計がうまく機能すれば、役員報酬や退職金制度を通じて実効税率を抑える工夫も可能です。数値を見ながら小さく改善を重ねることで、働きやすさと収益が並行して育っていく実感を得られます。


開業医のデメリット

収入は患者数と単価、固定費の設計に左右され、景気・診療報酬改定・競合出店など外部要因でも揺れます。採用や教育、クレーム対応、設備トラブルといった突発業務が重なると、休みが削られる時期もあります。
開業直後は借入返済や減価償却の負担が大きく、手取りが想定より伸びないことも珍しくありません。過大投資や広すぎる面積、広告の前倒しなどは資金繰りを悪化させます。
負荷を抑えるには、段階採用と在庫・人件費の上限設定、予約制の最適化、月次のKPI点検が有効です。孤立を避けるため、FPなどの専門家や同業者といった相談網を持っておくと判断がしやすくなるでしょう。


開業医に必要な初期費用とリスク

費用は物件・内装・機器・IT・採用教育・広告・備品に加え、赤字期を支える運転資金で構成されます。立地と科目で金額の幅が大きいため、投資の優先順位づけが欠かせません。次の小見出しで内訳と調達、想定すべきリスクを順に解説します。


開業にかかる初期費用の内訳

初期費用は総額3,000万円〜1億円が目安です。内科や皮膚科など設備負担が軽い科目は3,000万〜5,000万円、整形外科や眼科、産婦人科は6,000万円〜1億円超となる場合もあります。
内訳として、物件取得費、内装工事、医療機器、IT環境、広告、採用・研修、消耗品、手続費、開業後の運転資金などがあります。投資は「患者体験と回収が見える項目」を優先し、段階導入で無理を抑えるのが安全です。
下表は代表的な費用の相場例です(金額は目安となります)。









費用項目目安金額
物件・内装1,000万〜2,500万円
医療機器300万〜3,500万円
IT・電子カルテ100万〜500万円
広告・採用・研修150万〜400万円
運転資金(半年)600万〜1,500万円

開業資金の調達方法

自己資金に、金融機関の創業融資やリースを組み合わせるのが一般的です。審査では商圏データ、診療メニュー、来院数の根拠、人件費比率、資金繰り表、返済計画の整合性が見られます。返済開始時期と売上の立ち上がりを合わせ、初期の資金ショートを防ぐ設計が要点です。
機器はリースや中古を活用し、内装は標準化でコストを抑えます。広報は内覧会や紹介経路の整備、予約導線の最適化から着手し、広告費は段階的に投下すると効率が上がります。複数金融機関の条件を比較し、金利と保証、繰上げ返済の可否も含めて選ぶと後悔が減ります。


開業医のリスクと注意点

もっとも大きなリスクは「患者数の読み違い」と「固定費の過大」です。想定来院数に届かないまま人件費や家賃が重いと、財務状況の悪化に繋がります。
対策として、

  1. 来院の早期化(内覧会・地域連携・Web予約の改善)
  2. 固定費の漸増(段階採用・面積の抑制・リース活用)
  3. 月次の数値管理(来院数・単価・再診率・人件費比率)
といった3つの項目を徹底しましょう。季節変動や診療報酬改定、競合出店も視野に入れ、複数の収入柱(自費・健診・在宅)を用意すると来院数の増減に強くなります。
突発対応は手順書と責任者の明確化で軽くでき、離職防止には面談と育成の仕組みが効きます。


診療科や年代ごとの平均年収と生涯収入比較

科目の特性や年代、働き方の選択で年収は大きく変化します。数字は目安として扱い、手取りや時間、投資回収まで合わせて読み解く姿勢が大切です。
ここでは、代表的な科目の傾向、年代ごとの推移、生涯収入の考え方を順に解説します。


診療科ごとの年収ランキング

処置や手術、検査比率が高い科目、自費の設計余地が大きい領域は平均が上振れしやすい傾向です。勤務医は当直や手術件数で手当が積み上がり、開業医は機器投資と回転率で差が広がります。待ち時間短縮や予約枠設計、検査の動線づくりなど、運営の巧拙も結果に直結します。下表は代表例です(目安)。








診療科勤務医の目安開業医の目安
整形外科1,700万〜2,100万円2,800万〜3,500万円
外科1,600万〜1,900万円2,500万〜3,200万円
皮膚科1,300万〜1,800万円2,700万〜3,200万円
眼科1,400万〜1,700万円2,800万〜3,200万円

年代別のキャリアと収入推移

20代は研修と症例の蓄積期で500〜900万円が目安、30代は専門医取得や担当拡大で800〜1,200万円へ伸びます。40代以降は1,200〜1,600万円が一般的になり、科長クラスで2,000万円近い例もあります。30代で開業すると初年度は投資負担が重く手取りが抑えられる一方、2年目以降は予約や動線の整備で急伸しやすく、2,000万円超が見えてきます。いずれの道でも、健康管理と学びの投資を続けることが安定の土台となり、燃え尽きを防ぐ設計が長期の実りに直結します。


生涯年収のシミュレーション

生涯収入は「いつ・どこで・何科を・どの働き方で」の掛け算です。
勤務医は安定的に収入を得ることができ、退職金や福利厚生も含めると累計3〜4億円が生涯年収となります。
開業医は初期投資を完済後、軌道に乗ると来院数と単価、稼働時間の最適化で5億円以上になる可能性がありますが、外部要因で上下します。
可処分所得を最大化するには、税制の活用、資産運用、保険設計を合わせ、3〜5年ごとにKPI(来院数・単価・再診率・当直回数・可処分所得)を見直すことが実践的です。自身のワークライフバランスに合わせて検討しましょう。


勤務医・開業医のキャリア選択のポイント

最適解は人それぞれです。安定と成長、裁量と安心、家族の希望と自分の挑戦心。どれを今いちばん大切にするかで答えが変わります。次の小見出しで、進路変更の実例と、迷いを解く考え方の軸を示します。


勤務医から開業医になった体験談

転身した医師は、裁量の広さと結果の見えやすさを口にします。予約枠や検査導線を整えると待ち時間が短くなり、紹介が増える流れが数字に表れます。
一方で、採用や面談、設備の調整など診療外の仕事が増え、昼休みや休診日が実務で埋まる時期もあります。
月次で数値(来院数や単価など)を見て素早く対策をする姿勢と、地域連携や口コミの確認を欠かさないことが重要です。負荷はあるものの、工夫がそのまま患者満足と収入に反映される手触りがやりがいにつながる、といった声が良く挙がります。


開業医から勤務医に戻った事例

戻る選択は敗北ではありません。資金繰りや人事の重圧から離れ、診療や研究に集中する環境へ舵を切る判断です。家族の転居や介護、体調などの事情により勤務医へ戻る道を選ぶ方も多くいます。
開業で培った数値感覚や運営の視点は、勤務先でのマネジメントや地域連携、教育指導に活き、チーム全体の底上げに寄与します。経験を重ねたうえで再び開業する道もあるため、キャリアは一方向だけではありません。大切なのは、今の暮らしに合う働き方を選び直せる柔軟さです。


キャリア選択で重視すべき視点

判断の軸を言語化すると迷いが減ります。可処分所得、1日の時間割、年間休日、当直回数、家族の希望、学びたい分野など、数値と気持ちを同じ紙に並べると、自身の中で譲れない点と調整できる点が見えてきます。
勤務医は安定と機会の広さ、開業医は裁量と上振れの可能性が魅力です。リスクの許容範囲を具体的な金額レンジで共有し、3年後・5年後の姿を定期的に更新しましょう。どちらを選んでも、健康と学びへの投資を続けることが、長い医師人生を支える土台になります。


まとめ

勤務医と開業医では、同じ医師であっても年収の仕組みや生活のスタイルが大きく異なります。
勤務医は安定した給与と福利厚生があり、キャリアの段階ごとに収入を積み上げやすい点が魅力です。一方で開業医は、自分の経営判断や診療方針次第で大幅な収入増が可能ですが、固定費や投資リスクを抱えるため計画性が欠かせません。
診療科や地域によって収入差が出やすいことも、長期的なキャリア設計において重要な要素です。自分が何を優先したいのか、家族やライフプランを含めて総合的に判断することで、納得のいくキャリアを築けます。
安定と挑戦のどちらを選ぶにしても、数字だけでなく働き方や生活の質を見据えた選択を意識することが、医師としての豊かな未来に繋がるでしょう。


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この記事を書いた専門家(アドバイザー)

著者情報 newhampshire-media

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