クリニック経営・開業支援
病院経営支援
公式サイト
トップコラムクリニック開業でよくある失敗は?主な要因や失敗する特徴・対策を解説

クリニック開業でよくある失敗は?主な要因や失敗する特徴・対策を解説

コラム

2025.07.24

初めてのクリニック開業は医師としての理想を形にできる一方、資金繰りや立地選定、集患施策の不足など数多くの落とし穴が潜んでいます。
実際、開業1年以内に運転資金が底を突いたり、患者数が伸び悩んで閉院危機に直面する例も少なくありません。
「どこに注意すれば失敗を回避できるのか」「安全にスタートを切るための準備は何か」と悩む方へ、この記事ではクリニック開業で起こりやすい失敗要因を体系的に整理し、確実に対策を講じる方法を解説します。
読み終える頃には、自院の弱点を的確に把握し、行動すべき優先順位が明確になるため、安心して次のステップへ踏み出せるはずです。

クリニック開業が失敗する背景

クリニック開業が失敗に至るケースの多くは偶発的トラブルではなく、準備段階の見落としが複雑に絡み合った結果です。資金・立地・診療方針という三つの基盤が脆弱な状態で開業に踏み切ると、開業後に想定外の負荷が一気に顕在化し、早期の資金ショートや患者離れを招きます。
ここでは失敗を生む環境的背景を要素ごとに整理し、自院が抱える潜在的リスクを洗い出せるようにします。

資金計画の甘さ

開業資金は設備投資と運転資金に大別されますが、診療機器や内装にこだわるあまり総予算の大半を初期投資へ集中させる例が後を絶ちません。自己資金比率が低いと金融機関の融資条件は厳しくなり、金利負担が経営を圧迫します。
さらに電子カルテやPACSなどIT設備の更新サイクルは短く、減価償却費が数年後に重荷となる点も見落としがちです。長期視点を欠いた試算では、初年度黒字でも3年目以降に資金ショートが発生するリスクが高まります。

設備投資の過剰

高額な画像診断装置や高機能ベッドを「最新=集患強化」と考え導入するケースがありますが、患者数と検査単価が見合わなければ稼働率は低迷します。結果として維持費やリース料が固定費として膨らみ、1日当たりの損益分岐点が上昇します。
導入前に対象疾患の地域需要や近隣競合の装置保有状況を数値で検証し、投資額を回収できる収益モデルかどうかを確認することが不可欠です。

運転資金の不足

開業後3ヶ月程度は新患数が計画より少なく推移することが一般的で、想定した保険診療報酬が入金されるまでには2ヶ月のタイムラグもあります。この期間をカバーできる運転資金を確保していないと、スタッフ給与や家賃の支払いが滞り、信用低下につながります。最低でも月商の3ヶ月分、可能なら6ヶ月分の運転資金を事前にプールしておくことで突発的な資金繰りリスクを回避できます。

立地選定ミス

人通りの多さや駅距離だけで判断しテナント契約を結ぶと、同一診療科が密集するエリアでの価格競争に巻き込まれる恐れがあります。商圏分析では昼間人口・夜間人口・年齢構成・競合院の診療圏まで多角的に検証し、診療ニーズと供給量のギャップを見極める必要があります。
また、立体駐車場が無い郊外立地では、高齢患者の来院頻度が伸び悩む点も忘れてはなりません。

競合調査不足

近隣に強いブランド力を持つ医療法人が存在する場合、新規開業クリニックは薬剤費や自費検査で価格調整しても優位性を出しにくいです。
競合の診療時間、専門外来、在宅医療への対応などを詳細に調査し差別化できるポイントを明確化しないと、広告費だけが増え経営を圧迫します。

人口動態の見落とし

ファミリー層中心の新興住宅地は一見魅力的ですが、高齢化が進むまで診療単価が上がりにくく収益が安定しない場合があります。
自治体統計や開発計画から10年後の年齢構成比を推定し、診療科の需要が持続するか検証することが重要です。

診療方針の不明確さ

「地域貢献」を掲げるだけで具体的な診療コンセプトが定まらないと、人的・資金的リソースが分散し販促メッセージもぼやけます。
例えば一般内科と小児科を併設する場合でも「喘息専門」など専門性を明確に示すことで患者の来院動機を高められます。方針が曖昧なまま開業すると、導線設計や設備投資も場当たり的となり経営効率が低下します。

クリニック開業で失敗しやすい院長の特徴

院長の意思決定スタイルやマネジメント姿勢は、スタッフ満足度と患者体験を左右し、結果として経営成績に直結します。
ここでは失敗例が多い院長の行動パターンを取り上げ解説していきます。

ビジョン不在のまま開業

「勤務医より収入を増やしたい」「通勤時間を減らしたい」といった動機だけでは、困難が生じた際にチームを鼓舞する旗印になりません。院の成長ステージごとに掲げる使命や地域医療への貢献指標を数値化し、スタッフと共有してこそ組織は同じ方向に進めます。ビジョンが欠落すると人事評価基準もぶれ、離職率が上昇しやすくなります。

経営知識を軽視

決算書を税理士任せにする院長は、損益分岐点や資金繰り表をリアルタイムで把握できず、収益悪化を後追いで知ることになります。月次でPL・BSを確認し、変動費・固定費の推移を把握しなければ、小さな赤字が累積し資金繰り破綻に至る可能性があります。医療法人化や節税策の適切なタイミングを逃す点も要注意です。

スタッフマネジメント不足

開業初期は院長が診療・経営・採用の全てを担いがちですが、スタッフ教育を後回しにすると受付対応や診療補助の質が低下し、口コミ評価の急落に直結します。業務フローをマニュアル化し、定期面談で成長指標を提示することで定着率を高められます。院長が率先して働き方改革を示すことで、優秀な人材を維持・獲得しやすくなります。

クリニック開業の資金面での失敗事例

開業資金は潤沢に確保したはずなのに、わずか1年で資金繰りに行き詰まるクリニックは珍しくありません。問題の多くは融資条件の誤読や費用計画の抜け漏れなど、計画段階で防げたはずのヒューマンエラーに起因します。
ここでは代表的な以下の資金面での失敗事例を解説していきます。
  • 融資条件の誤解
  • キャッシュフロー悪化
  • 予備資金ゼロで開業
  • 税務計画の欠落
それぞれ順番に解説していきます。
すでに計画を立てている方は、自院の資金計画と照らし合わせ、抜け漏れがないかチェックしてみてください。

融資条件の誤解

金融機関が提示する据置期間や返済期間を十分に理解しないまま契約すると、開業後の収益が安定する前に元金返済が始まり、月次キャッシュフローを圧迫します。
例えば据置期間が6ヶ月だと思い込んでいたが実際は3ヶ月だった場合、設備投資の減価償却費と返済額が同時に発生し、資金ショートが発生するリスクが急増します。
契約前に金利タイプ・返済スケジュール・担保評価を詳細にシミュレーションし、複数の銀行を比較することが重要です。

キャッシュフローの悪化

保険診療報酬の入金タイミングは2ヶ月後であることを失念し、請求金額を売上計上した時点で使い込んでしまうケースがあります。さらにリース料や人件費は毎月固定で発生するため、入金のタイムラグを考慮しないと運転資金が想定より早く減少します。月次の資金繰り表を作成し、入出金予定を可視化したうえで、入金遅延や急な設備修理費に備えるための資金を確保しましょう。

予備資金ゼロで開業

自己資金をすべて内装や医療機器に投下し、開業後の広告費やスタッフ増員分を想定していないと、集患施策を打つ余力が残りません。結果として患者数が伸びず、追加融資も難しくなります。月商の3〜6ヶ月分を予備資金として別口座で管理し、緊急時にのみ使用するルールを徹底することで資金ショートを防げます。

税務計画の欠落

個人開業か医療法人化かを検討しないままスタートすると、所得税・消費税・社会保険料の負担が想定以上に膨らみます。特に所得が上昇する3年目以降は税率が急激に上がるため、節税策を講じない場合は手残りが大幅に減少します。開業前に税理士と相談し、減価償却の方法や医療法人化のタイミングをシミュレーションすることが不可欠です。

クリニック開業のマーケティング不足による失敗

開業直後は紹介や立地頼みで一定の患者が来院しますが、3ヶ月を過ぎるとリピーター獲得と新患流入の両輪が欠かせません。マーケティング視点が不足すると、競合院に患者を奪われ収益が下降線をたどります。
ここではマーケティング不足が招く以下の代表的な失敗パターンを解説していきます。
  • 集患施策の欠如
  • オンライン活用不足
  • ターゲット設定の曖昧さ
  • リピート患者獲得失敗
これら4つの視点を押さえることで、広告費を抑えながら安定的に患者を増やす土台を築けます。

集患施策の欠如

「医療は口コミで広がる」と広告投資を後回しにすると、開業から半年で来院数が横ばいになります。特に集患が難しい皮膚科や整形外科では、開業前から地域情報誌やオンライン広告で存在を認知させることが重要です。競合院が多い都市部では検索連動型広告や予約サイトの有料プランを活用し、露出を計画的に高める必要があります。

オンライン活用不足

ウェブサイトがスマートフォン表示に最適化されていない、診療予約が電話のみ。こうした状態では潜在患者が離脱します。
サイト構成は診療内容・医師紹介・予約動線を3クリック以内で完結させ、Googleビジネスプロフィールも最新情報に更新することで検索結果の上位表示と来院率を向上させられます。

ターゲット設定の曖昧さ

幅広い年齢層を対象に掲げると、広告メッセージが誰にも刺さらず費用対効果が低下します。例えば「働く世代の生活習慣病予防」に特化すれば、平日の夜間診療やオンライン診療を訴求ポイントにできます。対象を絞ることで限定された資金でも高い集患効果を得られます。

リピート患者獲得失敗

初診患者数ばかりを追い、再診率をモニタリングしないと経営は不安定になります。電子カルテから再診率を抽出し、Follow‑upメールや定期検診の案内を自動送信するなどリテンション施策を整備しましょう。再診率が上がれば広告費を抑えながら収益を安定化できます。

クリニック開業の法規制・手続きの落とし穴

クリニックを開設する際には医療法や建築基準法、労働関連法など複数の法規が絡みます。要件の解釈を誤ったり手続きを後回しにすると、行政指導や開院延期で大きな損失が生じます。
ここからは、開業時によく見落とされる法規制の観点と手続き上の落とし穴を解説していきます。
トラブルを未然に防ぐための参考にしてください。

医療法の理解不足

医療法では診療所の構造設備基準や標榜科目の表記方法が細かく定められています。例えば標榜科を追加する場合は保健所へ届出が必要ですが、手続き前に広告を出すと医療広告ガイドライン違反となり指導対象になります。
また、感染症法に基づく感染対策の動線確保や廃棄物処理体制も審査項目です。設計段階で法令を踏まえないと竣工後に改修が発生し、追加費用と開業遅延を招きやすいです。

開設許可申請の遅延

診療所の開設許可は内装工事完了後に保健所検査を経て交付されるため、工期が延びるとスケジュール全体がずれ込むリスクがあります。特に年末年始やゴールデンウィーク前後は行政窓口が混雑し審査が長期化する傾向があるため、余裕を持った申請が不可欠です。
消防法の検査や放射線取扱許可が必要な場合はさらに日数を要するため、工程表に諸官庁の休業日を反映し、遅延時の代替案を用意しておくことが重要です。

クリニック開業の失敗を回避するポイント

多面的なリスクに備えるには、開業前から継続的な計画・検証・改善のサイクルを回すことが要となります。
下記の三つの3ポイントを押さえることで、想定外のトラブルを最小限に抑え、経営を安定軌道に乗せやすくなります。
  • 事前のシミュレーションの徹底
  • 専門家との連携
  • 経営指標の継続管理
それぞれ順番に解説していきます。

事前のシミュレーションの徹底

開業後5年間の損益計画を月次で作成し、患者数が予測より2割下振れした場合の資金繰りも検証します。加えてスタッフ数増減や診療報酬改定が与える影響をシナリオ別に試算することで、予測不能な外部要因を吸収できる余裕がどれだけあるかを把握できます。
数値モデルをクラウド会計と連携させておくと、実績値とのギャップを即時に可視化でき、早期の軌道修正に役立ちます。

専門家との連携

医療専門の税理士・社労士・建築士・経営コンサルタントは、それぞれが異なるリスクを発見し是正策を提示します。
例えば税理士は資金繰りを、社労士は労務リスクを早期に警告できるため、月1回の定例ミーティングを設定し情報を共有する仕組みが望ましいです。
専門家報酬は固定費に見えますが、失敗コストの削減効果を考慮すれば高い投資対効果が期待できます。

経営指標の継続管理

開業後は診療単価・再診率・1日当たり患者数・人件費率などのKPIを定義し、目標値と実績値を毎月比較します。
KPIが未達の場合は原因分析と改善策を翌月の行動計画に反映するPDCAサイクルを徹底することで、問題が深刻化する前に手を打てます。
KPIダッシュボードをスタッフと共有することで、組織全体が数字を基準に動く文化が醸成され、院長だけに負担が集中しません。

まとめ

クリニック開業が失敗に陥る主因は、資金計画・立地選定・マーケティング・法規対応・院長のマネジメントという五つの分野に集約されます。
各フェーズで生じやすいリスクを把握し、事前シミュレーションと専門家連携で検証体制を築けば、突発的なトラブルにも柔軟に対応可能です。
開業後は経営指標を定点観測し、患者体験とスタッフ満足度を同時に高める改善策を継続することで、地域に信頼されるクリニックとして長期的な成長を実現できます。
ニューハンプシャーMCでは、医療に特化したコンサルティングサービスを提供しております。
開業や継承、集患に悩んでいる方は、ニューハンプシャーMCにご相談ください。
オンラインでの無料相談も行っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせはこちら

また、弊社の考え、ノウハウが凝縮された書籍も販売しております。
弊社にお問い合わせいただく9割以上の方が、本を通じて弊社の考えに共感しお問い合わせいただいております。

この記事を書いた専門家(アドバイザー)

著者情報 廣野和也

株式会社ニューハンプシャーMC 
主任コンサルタント 廣野和也

大学卒業後、複数の職務を経験し、株式会社ニューハンプシャーMCに入職。
これまで、数十件のクリニック開業を支援し、経営難による閉院ゼロという成果を築く。

関連記事

2024.12.15

クリニック開業で後悔・失敗で多いケースは?気をつける点や予防法を紹介

2025.04.24

医療経営コンサルタントとは?業務内容や依頼するメリット・選ぶポイントを解説

2025.02.23

クリニックの開業コンサルとは?選び方やサポート内容を解説

2025.07.24

クリニック開業時の資金・事業計画とは?書き方・作成手順などを解説

2025.07.24

クリニック継承のメリット・デメリットは?新規開業との違いも解説

2025.02.23

開業医の年収はいくら?平均年収や勤務医との違いを解説

New

新着記事はこちら

Share on