「医師免許を持っていない方でも、クリニックを開業することはできるか?」これから多様化するヘルスケアニーズを背景に、美容やリラクゼーション関連など新しい事業を始めたいと考える人が増えています。
しかし、医療法や広告ガイドラインなど、医師以外の開業にはさまざまな制約が存在し、具体的な手続きやリスクを理解しないまま開業すると大きなトラブルを招きかねません。
そこで本記事では、医師免許を持たない方がクリニック開業を目指す場合に知っておきたい法的要件、注意点、メリット・デメリット、そして成功へ導くポイントを分かりやすく解説します。
クリニック開業に興味をお持ちの方は、ぜひ最後までご覧いただき、正確な情報をもとに将来の事業プランをしっかり固めてください。
医師以外がクリニックを開業することは可能なのか

クリニックを開業すると聞くと、通常は医師免許を持つ人が行うものだとイメージされます。しかし、実際には医師免許を持たなくても法的要件を満たせば開業できる仕組みが存在します。たとえば、開設者と管理者(医師)を別に設定し、医師が診療を担当する方法です。この場合、開設者としての責任や運営の実態が名義貸しとみなされないように、法律や規則に沿った体制を整える必要があります。医師以外の視点を取り入れることで、新たなヘルスケアサービスを地域に提供できる可能性が広がる反面、法的リスクや管理体制の構築が難しくなる点は意識しておきましょう。
医療法で定められた開設者の要件
医師以外がクリニックを開業するうえでは、医療法をはじめとする法令で規定された開設者の要件を正しく理解することが重要です。許可や届け出先となる自治体(保健所など)の指導方針にも注意が必要であり、特に都道府県ごとに運用が異なる場合もあるため、事前の確認が欠かせません。医療機関を開設するには管理者となる医師を確保し、診療報酬の請求や医療安全管理など、多岐にわたる責任をともに担う体制を構築する必要があります。
個人開設か医療法人か
個人開設の場合、医師免許の有無にかかわらず開設者としての責任範囲が明確に問われることになります。医療法人として運営するなら、理事の構成や定款の内容、人員配置など追加の要件が課されますが、将来的な規模拡大や出資者の参加など、安定的な運営が見込める側面もあります。クリニックの規模や理念に合わせて、最適な形態を選びましょう。
名義貸しに該当しないための注意
医師以外の開設者が表面上だけ運営し、実質的には他の医師が事業を牛耳っていると名義貸しと見なされるリスクがあります。名義貸しが発覚すると、行政処分だけでなく社会的信用の失墜や罰金など重いペナルティを科される可能性があります。経営実態を示すためには、開業届や医療法人設立時の書類、理事会議事録などを適切に整備し、意思決定のプロセスを明確化しておくことが肝心です。
医療従事者ではない場合の事業スキーム
医師免許のない個人や企業がクリニックの開業を行うには、医師を雇用したり、医療法人と連携するなど、医療従事者を中心に据えたスキームを構築する必要があります。たとえば「医師が診療に専念し、開設者が経営やマーケティングを担う」形を取ることで、専門分野を分担しやすくなる点がメリットです。こうした役割分担を適切に行えば、従来のクリニックにはない新しいサービスを提供する余地も広がります。
医師を理事に迎える場合のポイント
医療法人を設立する場合、医師を理事として迎え入れることで診療行為における責任や専門性を確保できます。理事会のメンバーとしてしっかり経営判断に参加し、サービス内容や運営方針に関する議論を行うことが大切です。医師をただ名目上の理事に据えるだけでは名義貸しに該当するおそれもあるため、医療の実務と経営が一体となった運営体制を作りましょう。
医療機関以外との連携によるサービス展開
医師以外が開業を手掛ける場合、医療機関や社会福祉法人だけでなく、介護施設や美容サロン、フィットネスジムなど非医療分野の事業者と連携する道もあります。
予防医療や美容・健康促進をトータルでサポートする形態を整えれば、利用者のニーズを幅広く満たせる可能性があります。ただし、医療行為と非医療行為の区別が曖昧だと行政からの指導やトラブルにつながることがあるため、提供するサービスの枠組みは明確にしておきましょう。
医師以外がクリニックを開業するメリット・デメリット

「クリニックの開業」を医師以外の立場で行うには、多様な視点を取り入れられるメリットがある一方、法規制の負担や人材確保の難しさといったデメリットも存在します。どのようなポイントを踏まえて検討すべきか、以下で整理してみましょう。
メリット
医師以外が経営に携わることで、医療分野にとらわれない新たな発想を取り入れやすくなります。これにより、従来の病院や診療所にはない特色を生み出すきっかけとなることがあります。
多様なヘルスケアサービスを展開しやすい
保険診療の範囲を超えた自由診療や健康サポートプログラム、最新のリラクゼーション施術などを組み合わせることで、患者や利用者に幅広い選択肢を提供できます。医師側の専門知識と開設者側の事業企画力を掛け合わせることで、医療と健康増進を一体化した新しいビジネスモデルを打ち出すことが可能です。
一般企業との協業で幅広いニーズに対応
医療機関に縁のなかった企業が参入すると、ITやマーケティングのノウハウを活かしたスムーズな予約システムや情報発信が実現しやすくなります。オンライン診療や受診履歴のデータ分析などを通じて効率的に運営できる点は大きな利点です。企業同士の連携が進めば、新たな治療方法の研究開発や、健康管理サービスとの連携なども視野に入るでしょう。
地域住民への新たな健康サポートが可能
地域の方々が気軽に立ち寄れるような場所づくりを目指すなら、健康相談や栄養指導、リハビリテーションなどのプログラムを充実させることができます。医師以外の開設者だからこそ、従来の医療機関とは異なる視点で地域の課題を捉え、必要な支援を柔軟に提供できる場合があります。地域コミュニティに根ざした存在になれば、長期的な信頼と安定した利用者確保にもつながります。
デメリット
医師が行う医療行為を支えるためには、法令への厳格な対応や専門スタッフの雇用など、多くの手間とコストがかかります。医療分野ならではの制約をしっかり把握しておかないと、開業後に思わぬリスクが顕在化する場合があります。
医療行為の制限と法的リスク
医療行為に該当する範囲は法律で厳しく定義されています。医師免許を持たない開設者が診療に介入したり、不適切な広告を行ったりすると行政処分や刑事罰を受けるおそれがあります。また、診療報酬の請求ルールを誤ると返還請求や罰則対象になるため、専門知識がないまま運営するとリスクが高まります。法令を学ぶだけでなく、実務経験豊富な医療スタッフやアドバイザーと連携を図ることが重要です。
医師との連携・雇用コストの負担
医師をはじめ、看護師や医療事務スタッフなど専門人材をそろえるには多額の人件費が必要です。開業初期は患者数が少なく、黒字化まで時間を要するケースも珍しくありません。理想ばかりを追い求めず、堅実な資金調達計画や雇用スケジュールを立てないと、経営不安につながる可能性があります。
トラブル防止のための契約・責任範囲の明確化
経営者と医師の立場や役割があいまいだと、診療報酬の取り扱いや医療事故が発生した際の責任などについてトラブルが起きやすくなります。トラブルが顕在化すると信用不安や賠償問題にも発展しかねません。契約書を作成する際は、業務の分担内容や権限、金銭の取り扱いなどを細かく定めておくことが肝心です。
クリニック運営で注意すべき法律・規則

「クリニックの開業」を医師以外の視点で行うには、広告や診療報酬の請求基準、医療事故対応のマニュアル作成など、医師が運営する以上に入念な準備が欠かせません。法律や規則を誤って解釈していると、思わぬトラブルや営業停止のリスクを抱えることになります。
医療広告ガイドラインへの適切な対応
医療機関の広告は、一般的なサービス業よりも厳格な基準で規制されています。過剰な宣伝文句や虚偽表現は厳しく取り締まられるため、患者さんの誤解を招かない正確な情報発信が重要です。特に、自由診療や美容医療の分野は誇大広告になりやすいため、ガイドラインをよく確認しましょう。
広告表現のチェックポイント
「100%治せる」「永久保証」など、絶対的な言い回しが入っていると虚偽表示と判断される恐れがあります。治療のリスクや副作用、費用に関する情報を正確に提示し、利用者が適切な選択を行えるよう配慮することが求められます。ホームページやチラシだけでなく、SNSでの投稿や口頭での説明も広告としてみなされる場合があるため注意しましょう。
違反リスクを回避するための具体策
広告の公開前に、医療法やガイドラインに通じた専門家にチェックしてもらうことが有効です。広告に載せる内容は厚生労働省の通達や自治体の担当部署でも確認できます。また、誇張のない実績や症例、患者さんの声を客観的に示すことで、クリニックへの信頼度を高めることにもつながります。
施設基準と人員配置のチェックポイント
医療施設としての基準や人員配置のルールを守らなければ、保険診療の請求が認められないなど経営面で大きな損失を被ることがあります。クリニック開業を目指す医師以外の方にとっては、法令が多岐にわたるため混乱しがちです。開業計画の初期段階で専門家のサポートを受けながら確認しましょう。
医療スタッフや設備の要件
検査機器や画像診断装置、レントゲン室など、取り扱う診療科によっては細かい設備要件が定められています。スタッフの配置についても、看護師や薬剤師の人数や資格によって満たすべき基準が変わるため、どの診療科をメインに据えるかを明確にして、必要な人材や設備を整えることがポイントです。人員配置に見合った施設レイアウトを考慮しながら内装工事を行うとトラブルを避けやすくなります。
保険診療と自由診療の線引き
美容施術や自費のワクチン接種など、保険が適用されない自由診療を行う場合は、保険診療との混在が生じないように注意が必要です。混合診療を行うと規定違反となる可能性があり、後々返還請求に発展するケースもあります。診療報酬を請求する際は、レセプトを厳密にチェックしておくと安心です。
医師以外が開業を成功させるためのポイント
医師免許がなくてもクリニックを成功に導くには、経営者としての視点と医療専門家の知識を融合させる仕組みが欠かせません。法的要件をクリアしたうえで、資金繰りやチーム編成、地域との連携を通じて競合と差別化を図るのが鍵となります。
専門家と連携したチームづくりの重要性
医療分野は規制や手続きが複雑なため、開設者単独で全てを進めるのはリスクが高いと言えます。税理士や社労士などの士業、医療コンサルタント、そして医師と協力することで、法律・財務・医療安全管理といった観点を総合的にカバーできるチーム体制が整います。
法律や税務に詳しい士業の活用
医療法にまつわる書類作成から給与計算、社会保険対応など、開業後も多方面にわたって士業の支援が求められます。状況に合わせて正しく届け出を行い、不備があれば迅速に修正することでクリニックの信頼を守ることができます。こうしたバックオフィス業務に専門家の知見を取り入れることで、経営者は本来の事業活動に集中しやすくなるでしょう。
医療業界に精通したコンサルタントの力
医療分野の市場調査やマーケティング戦略立案、スタッフ教育など、きめ細かなサポートを提供するコンサルタントの存在は大きいです。経験を積んだコンサルタントなら、他院との差別化戦略から集患施策まで、事例に基づいた具体的なアドバイスを行うことが期待できます。医療機関の特性を理解しながら経営をサポートしてくれるため、開業後の成功率を高めやすくなります。
事業計画と資金調達のコツ
医師以外であっても、しっかりとした事業計画と資金計画を示すことで、金融機関や投資家の信頼を得ることができます。開院に必要な設備投資や運転資金だけでなく、将来的な拡張や追加サービスの計画も踏まえておくと、安定した経営を見通しやすくなります。
具体的な資金計画書の作成方法
まずは開業初期の初期費用と月次の収支予測を整理し、損益分岐点を明確にします。医療機器やスタッフの給与、広告費などは固定費として大きな比重を占めるため、開業後3か月〜6か月程度の赤字を見越した運転資金を確保することも大切です。数字に根拠を持たせるため、想定患者数や近隣競合の情報を踏まえて試算すると信頼性が高まります。
金融機関や投資家との交渉ポイント
融資を受ける際には、事業の公共性や地域貢献度をアピールするのが効果的です。医療は社会的ニーズが高く、安定的な需要が見込まれる分野だと認識されることが多いです。投資家の場合は、どのような収益モデルを実現し、どれほどの市場規模があるのかを具体的に示せると良いでしょう。計画の信頼性が高いほど、有利な条件で出資を受けやすくなります。
補助金・助成金の活用例
地域医療の拡充を目的とした補助金・助成金は自治体によって内容や条件が異なります。調剤薬局との一体運営や医療過疎地での開業など、特定の要件を満たすと支援の対象となる可能性があります。募集時期や要件を見逃さないためにも、自治体のホームページや各種情報サイトを定期的に確認しておきましょう。
地域医療との連携強化による信頼獲得
大きな病院や既存のクリニックと連携することで、医療の質を保ちながら患者さんに安心感を提供できます。協力体制を整えておけば、検査や入院が必要な場合の紹介先をすぐに確保できるため、利用者からの評価にも直結します。
開業前にネットワークを構築するメリット
開業準備の段階で地域の医師会や行政、他の医療機関などと交流し、顔を知ってもらうことは大切です。緊急時の対応や定期検診の実施などで、普段から連携を取っておくと診療体制がスムーズに機能します。また、医師の学会や勉強会に参加して情報収集と人脈づくりをしておくことで、開業後に困った際の相談先が増えます。
地域住民と医療関係者からの信頼度アップ
医師以外の立場であっても、医療スタッフや地域の医療関係者と積極的にコミュニケーションを取ることで、長期的な信頼関係を築くことができます。無料健康相談や講演会の開催などを通じて地域貢献を重ねていけば、住民にとって身近で頼れるクリニックとして認知されやすくなります。こうした地道な取り組みがリピーターの獲得にもつながるでしょう。
まとめ
医師免許がない人でも法的な要件や適切な運営体制を整えることで、クリニックの開業を実現することは可能です。医師と協力しながら、名義貸しと疑われない手続きを踏んでおけば、新しいヘルスケアビジネスの場を築くチャンスが得られます。開業にあたっては、医療広告ガイドラインや施設基準などの規則を正しく理解し、専門家の力を借りることが欠かせません。加えて、十分な資金調達と地域ネットワークの構築も安定した経営の鍵となります。しっかりと準備を重ねれば、医師以外の視点を活かした魅力あるクリニックを地域に根付かせ、利用者や医療関係者からの信頼を高めることができるでしょう。
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