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電子カルテを使いこなすには?機能や効率的な使い方・導入方法を解説

コラム

2025.05.21

昨今、医療のIT化が急速に進むなか、多くのクリニックでは電子カルテを導入して業務の効率化を図ろうとしています。しかし、「使いこなすにはどうすればよいのか」「どの機能をどのように活用すれば効果を最大化できるのか」といった悩みを抱える院長先生やスタッフの方々は少なくありません。
そこで本記事では、クリニック開業や経営の専門知識を持つ立場から、電子カルテの基本機能や導入の手順、そして効率的な使い方を解説します。
読むことで、スタッフの負担軽減はもちろん、患者さまの満足度向上にもつながる具体的なノウハウを得られるはずです。
電子カルテを存分に活用し、よりスムーズで質の高い医療サービスを提供するためのポイントを、ぜひ本記事から掴んでみてください。

目次

電子カルテを導入するメリットと課題

電子カルテの導入によって医療の質と業務効率を向上させるチャンスが生まれます。一方で、初期費用の捻出やスタッフ教育に関する課題を抱える可能性もあるため、メリットとリスクの両面を理解しておくことが大切です。現場に無理なく馴染ませるためには、事前準備をしっかり行う必要があります。

ペーパーレス化と業務効率の向上

紙のカルテや書類が減ることで、院内の整理整頓が進み、検索の手間や紛失リスクを低減できます。複数人が同時に患者情報を閲覧できるため、診察の待ち時間短縮にもつながる点が大きな魅力です。環境負荷を軽減する側面もあり、経営だけでなく社会的責任の観点からもプラスに働きます。

医療ミス軽減と情報共有の促進

手書き文字の読み間違いや記入漏れが減り、診療における正確性が向上します。カルテ情報が一元的に管理されるため、複数の医師やスタッフが患者の状態を正しく把握しやすくなることも重要なポイントです。院内連携がスムーズに進みやすくなるため、患者さんの安心度も高まります。

導入に伴う初期費用やスタッフ教育の課題

システム導入にはライセンス費用やハードウェア購入費、ネットワーク整備など多面的なコストがかかります。スタッフがシステムを扱うための研修期間中は、慣れない操作による一時的な業務停滞も考慮しておきたいところです。計画的に予算と時間を確保することでスムーズな導入につながります。

電子カルテの主な機能と特徴

単に紙のカルテをデジタル化するだけではなく、患者管理やレセプト連携など多彩な機能が備わっています。電子カルテをしっかり使いこなすには、これらの機能を正しく理解することが欠かせません。

患者管理機能:予約・受付・カルテ情報の一元化

患者の予約から受付、カルテ内容までをひとつのシステムで管理できます。来院時には受付スタッフが瞬時にカルテを開いて状況を確認できるため、名前や診療科の手違いが起きにくくなります。患者さんからすれば、受付や会計が素早く進むことで利便性が高まり、再来院の意欲につながるケースがあります。

入力支援機能:定型文や音声入力を活用する

カルテ入力の負担を軽減するために、定型文を呼び出す機能や音声入力を取り入れたシステムが存在します。慣れない医療スタッフでもテンプレートや音声認識を使うことで素早くデータを記録でき、診療時間を有効活用できる点が魅力です。患者さんとのコミュニケーションをより丁寧に行うための助けにもなります。

レセプト連携・会計システムとの連動

入力された診療情報がレセプト作成や会計処理に自動連動するので、医療事務スタッフの作業量を減らせます。二重入力やヒューマンエラーが起きにくくなることで、ミスによる再確認や修正作業の負担を減らすことも可能です。経営側としてはレセプト不備が減ることでキャッシュフローが安定しやすいメリットがあります。

クラウド型とオンプレ型の選択ポイント

クラウド型は外部サーバにデータを保存するため、院内の機器管理やメンテナンスを減らせる利点があります。ただし、通信障害時にはカルテにアクセスできなくなるリスクがある点に注意が必要です。オンプレ型は自前のサーバにデータを置くため、通信状況に左右されにくい反面、機器の保守コストや専門スタッフの確保が課題になります。

電子カルテを効率的に使いこなすためのポイント

システムを導入しても、運用が定着しなければ期待する効果が得られません。電子カルテをスムーズに活用し、院内の生産性を高めるためにはスタッフ教育や設定の最適化が不可欠です。

事前のスタッフ研修とITリテラシー向上策

医療従事者の中には、デジタル機器の操作に不慣れな方もいます。導入初期の段階で基礎操作から応用的な使い方まで、段階を踏んで教える研修を実施することが重要です。ベンダーが提供するマニュアルや説明会を活用すると理解が深まり、トラブル時の対処方法も学びやすくなります。

ショートカットやカスタマイズの活用法

毎日の診療で繰り返し入力する項目は、ショートカットキーや定型文機能を活用すると時間を大幅に削減できます。さらに必要のない画面やボタンを非表示にし、スタッフの役割に応じて最適化すると操作性が高まります。情報を共有する際には手軽なメモ機能などをうまく取り入れ、意思疎通を効率化しましょう。

トラブル時の対応とアップデートの重要性

システム障害やバージョンアップに対応できる体制を整えることで、業務を止めずに継続できるかが変わってきます。常に最新バージョンを維持しておけばセキュリティ強化や機能追加が行われ、長期的に見るとトラブル発生を減らす効果が期待できます。スタッフには定期的に新機能の案内や使用方法を周知するとよいでしょう。

システム障害時の緊急対応マニュアル

停電や機器トラブルなど、予測不能な事態への備えが欠かせません。具体的には紙のカルテを臨時に使う手順や代替装置の手配方法などを決めておくと、診療の中断を最小限に抑えられます。スタッフ間で連絡ルートを共有しておくとスピーディーな対処が可能です。

定期メンテナンスとバックアップの実施

院内の業務を円滑に続けるためには、ハードウェアとソフトウェアの定期メンテナンスが不可欠です。サーバの劣化やデータベースの肥大化などが起こりやすいので、定期的にバックアップを取得し、安全に保管する体制を整えましょう。復元テストを行うことで、いざというときのリスクを低減できます。

電子カルテ導入における具体的な手順

クリニックごとに最適な導入計画やスケジュールは異なります。診療形態や職員数、予算規模などを総合的に考慮し、焦らず段階的に導入を進めることがポイントです。

クリニックの現状分析と導入計画の策定

まずは院内の患者数、診療科、スタッフのITスキルなどを客観的に把握し、電子カルテ導入の目的や期待する効果を明確にします。業務プロセス上の問題点を洗い出し、どの部分を重点的に改善したいかを定めると導入後の評価がしやすくなります。

診療科やスタッフ数に合わせたシステム選定

小児科や内科など診療科ごとに必要な入力項目や機能は異なります。スタッフ数が多いほどライセンス形態や通信環境にも影響が出るため、複数のシステムを比較しながら最適な製品を選ぶことが大切です。操作性やサポート内容も選定の重要な要素になります。

費用対効果のシミュレーション

導入にかかる初期費用だけでなく、月々の使用料や保守費用、さらに研修コストなども合わせて計算しましょう。導入後に期待できる業務効率の向上やレセプト処理の自動化による時間削減がどれくらいの金銭価値になるかをシミュレーションすると、実際の投資判断が明確になります。

メーカー・ベンダーとの連携とスケジュール管理

計画的なスケジュールを立て、ベンダーとの連携を密にとることで導入時のトラブルを最小限に抑えられます。開業準備や繁忙期を避けて導入テストを行い、スタッフ研修や機器設置を順次進めると、移行時の混乱を減らすことができます。こまめに進捗を確認し、課題があれば早期に対応することが大切です。

導入後のサポート体制とスタッフへの周知徹底

新システムの運用が始まってからも、ベンダーのサポートをスムーズに受けられるよう契約内容をよく確認しておきましょう。スタッフ同士で操作マニュアルやノウハウを共有し、運用ミーティングを定期的に開いて使い勝手や問題点を話し合うと、導入効果を持続的に高めやすくなります。

電子カルテ導入時に知っておきたいリスクと対策

便利なシステムほど、トラブルが起きた際の影響は大きくなります。事前にリスクを洗い出し対策を講じることで、安全に運用しながら利便性を最大化できるでしょう。

データ漏洩やセキュリティリスクへの対処

患者の個人情報を扱う以上、セキュリティ対策は欠かせません。アクセス権限の細分化やパスワードの定期変更、ウイルス対策ソフトの導入などは基本となる取り組みです。万一漏洩が起きた場合の対応フローや報告手順を決めておくと、被害を最小限に抑えられます。

クラウド型ならではの注意点:通信障害への備え

インターネット回線がダウンすると、電子カルテの閲覧や入力ができなくなる恐れがあります。緊急時に備えて回線を複数契約する、あるいはオフラインでも最低限の閲覧ができる仕組みを用意するなどの対策を検討してください。通信速度の安定性やサーバの稼働率も事前にチェックしておくと安心です。

オンプレ型におけるサーバ管理の負荷とコスト

院内でサーバを保有する場合、ハードウェアの保守点検やセキュリティアップデート、障害発生時の復旧対応など多くの作業が伴います。専門のITスタッフを雇用するか、外部業者に保守を委託するかを検討し、どの程度のランニングコストが見込まれるか事前に算出することが大切です。

成功事例から学ぶクリニック経営への応用

導入を成功させた施設の取り組みを参考にすると、自院に合った運用策や改善点を発見できます。経営指標の分析やスタッフの働き方改革にまで踏み込むことで、より大きなメリットを得られるでしょう。

電子カルテ導入により患者数が増加したケース

事前予約システムを整備し、待ち時間を可視化して診療のスケジュール管理を行ったところ、患者さんの負担が減ったため新規患者の来院数が増加した例があります。公式サイトやSNSを活用し、短縮された待ち時間をアピールしたことが集患効果を高めました。

スタッフの残業が大幅に削減されたケース

レセプト作業やカルテ整理を電子化した結果、手作業による確認や計算ミスが激減し、スタッフの残業時間が削減されたクリニックもあります。業務効率化によって生まれた余裕を患者対応や院内環境の改善に回すことで、患者さんの満足度が上昇した事例があります。

経営指標を可視化して継承にも役立てる方法

電子カルテのデータを活用すれば、月別の患者数や処置内容、収益動向などを簡単に集計できます。視覚的なグラフや表に落とし込むと状況を分析しやすく、意思決定が迅速化する利点があります。後継者への事業継承時においても、データに基づいた説明を行うことでスムーズな引き継ぎが可能です。

まとめ

電子カルテの導入は、業務効率化や医療ミス軽減など多くのメリットをもたらします。一方で、初期費用やスタッフ教育、通信障害といったリスク対策を怠ると、導入効果が半減する可能性があります。必要な機能を洗い出し、自院に合ったシステムを選んだうえで、研修・運用・サポート体制を総合的に整えることが大切です。
クラウド型とオンプレ型の特徴を踏まえて検討を進めると、導入後のトラブルを防ぎながら長期的なメリットを享受できるでしょう。電子カルテを最大限に使いこなすために、継続的な改善とスタッフ間の連携をしっかり行い、患者さんの満足度とクリニックの経営力を同時に高めていくことを目指してください。
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この記事を書いた専門家(アドバイザー)

著者情報 柴田雄一

株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役

米国MBA留学後大手経営コンサルティング会社を経て2004年当時では珍しかった医業経営コンサルティングに特化したニューハンプシャーMCを設立。20年以上にわたる深い知見とユニークな視点からの具体的な支援がクライアントからの高い信頼を獲得し続けている。またそのユニークな視点を言語化した医業のマーケティング、スタートアップ(開業)、マネジメントをテーマにしたプロフェッショナルシリーズをそれぞれ出版し、影虎(本の登場人物の経営コンサルタント)ファンも数多い。
南ニューハンプシャー大学経営大学院(MBA)卒

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