医療法人にしない理由って、実際どうなの?と考えたことはありませんか。クリニックや医院を経営していると「法人化した方がいいのかな」と悩む場面が多いですが、あえて個人事業のまま続けている方もたくさんいます。
この記事では、医療法人にしないことのメリットやデメリット、税金の違いや事業承継・相続、経営の自由度やコスト負担など、気になるポイントを分かりやすく解説します。
クリニックの規模や売上によって法人化すべきかどうか迷っている方にも役立つ内容になっています。医療法人化をしようかどうか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
開業医が医療法人にしない理由には、経営の自由度や事務負担の軽減、経済的な判断など、さまざまな要素が関係しています。特に個人事業の継続を選ぶ背景には、その人ならではの価値観や診療スタイル、クリニックの規模や今後の展望が深く結びついています。
実際、全国の診療所のうち、医療法人化しているのは約4割程度で、残りの6割は個人開業医として運営されています。これは決して「法人化の知識がない」からではなく、個人事業のメリットを理解したうえでの積極的な選択であるケースが多いのです。
ここからは、医療法人にしない主な理由や、クリニックの規模による判断基準、診療科ごとの傾向について具体的に解説します。
開業医が医療法人にしない理由には、いくつかの共通点があります。実際のアンケート調査や開業医の声をもとに、主な理由を整理すると以下のようになります。
1. 経営の自由度を維持したい(最も多い理由)
2. 事務負担・管理コストの増加を避けたい
3. 現状の規模では法人化のメリットが少ない
4. 非営利法人としての制約を受けたくない
5. 都道府県の監督強化を避けたい
6. 後継者がいない・事業承継の予定がない
医療法人にする場合、理事会や社員総会の運営、定期的な報告義務など、多くの手続きや管理業務が発生します。これが本業である診療に集中したい医師にとっては大きな負担となることが少なくありません。
また、医療法人は非営利法人のため剰余金の分配が禁止されており、利益を自由に活用できない点も敬遠されがちです。さらに、法人化によって都道府県の監督が強化され、経営の自由度が制限されることもネックとなっています。
特に、利益配分や意思決定の制約、事務処理の煩雑さを理由に、個人事業を選ぶ開業医が多いのが実情です。
医療法人にするかどうかの判断は、クリニックの規模や売上に大きく左右されます。ここでは、具体的な数字を用いて判断基準を解説します。
法人化の損益分岐点
一般的に、以下のような目安で法人化のメリットが出始めるとされています:
1. 事業所得ベース
2. 診療報酬ベース
3. 具体的なシミュレーション例
年間診療報酬6,000万円、経費率60%のクリニックの場合:
| 項目 | 個人事業 | 医療法人 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 診療報酬 | 6,000万円 | 6,000万円 | - |
| 経費 | 3,600万円 | 3,600万円 | - |
| 所得 | 2,400万円 | - | - |
| 所得税・住民税 | 約900万円 | - | - |
| 役員報酬 | - | 1,800万円 | - |
| 給与所得控除 | - | 約200万円 | - |
| 法人所得 | - | 600万円 | - |
| 法人税 | - | 約90万円 | - |
| 個人所得税(役員報酬分) | - | 約600万円 | - |
| 合計税額 | 約900万円 | 約690万円 | 約210万円の節税 |
※この試算は簡易的なものであり、実際には社会保険料の増加や事務コストの増加も考慮する必要があります。
法人化が不要・不利になるケース
たとえば、年間事業所得が1,800万円を下回るような小規模クリニックでは、個人事業のままでも経営上の不都合が少なく、手続きや運営コストの増加を避けられる点で個人事業が選ばれがちです。また、現時点で分院の展開や事業承継、組織的な拡大を予定していない場合も、無理に法人化する必要はありません。
クリニックの成長性や将来の方向性、家族や後継者の有無なども判断材料となるため、それぞれの事情に応じて最適な選択をすることが大切です。
診療科によって、医療法人化の傾向には明確な違いがあります。以下、主な診療科別の特徴をまとめます。
法人化率が高い診療科
1. 整形外科
2. 産婦人科
3. 内科(総合内科・循環器内科など)
法人化率が低い診療科
1. 歯科
2. 皮膚科・美容皮膚科
3. 精神科・心療内科
歯科医院や診療科ごとに、医療法人にしない理由には傾向の違いが見られます。特に歯科分野では、診療報酬の変動や患者数の安定性、個人経営ならではの柔軟な診療スタイルが重視されることが多いため、法人化を避けるケースが目立ちます。
歯科医院の場合、経営規模が比較的小さいことが多く、個人事業主としての経営で十分に運営が成り立つケースも多いです。また、医科と比べて自由診療の割合が高く、収益構造が異なるため、法人化による恩恵が限定的になりやすい傾向があります。
こうした分野特有の事情や制度上の違いも、医療法人にしない選択を後押ししています。分野ごとの経営環境や規制の違いを理解し、自院に合った経営形態を選ぶことが重要です。
医療法人にしないことで得られる利点は、経営の柔軟性や事務手続きの簡素化、コスト面での負担軽減など、多岐にわたります。個人事業としてクリニックを続けることで、日々の経営判断や将来の方向性に柔軟に対応できる点が大きな魅力です。
ここからは、個人事業を選ぶことで得られる具体的なメリットについて詳しくご紹介します。
個人事業主としてクリニックを運営する最大の魅力は、何よりも経営の自由度が高いことです。
意思決定のスピードと自由度
資金の使い道の自由
診療スタイルの柔軟性
意思決定のスピードや内容に制約が少なく、診療方針の変更やサービス内容の見直し、新たな取り組みの導入なども院長自身の判断で迅速に行えます。理事会や社員総会などの合議体制が必要ないため、現場で感じた課題や患者ニーズに柔軟に応じやすいのが特徴です。
また、日々の経営や資金の使い方も自分の裁量で決められるので、設備投資やスタッフの採用、診療時間の変更なども柔軟に対応できます。こうした自由度の高さは、医療現場での即応力や、クリニック独自の魅力づくりにもつながるでしょう。
医療法人の場合、設立時や運営時に多くの書類作成や行政への報告義務が課されますが、個人事業のままであればこうした事務作業が大幅に簡素化されます。
簡素化される手続き
1. 設立・変更時
2. 日常的な手続き
削減できるコスト
| 項目 | 個人事業 | 医療法人 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 税理士報酬(年間) | 30万〜60万円 | 60万〜150万円 | +30万〜90万円 |
| 社労士報酬(年間) | 0〜20万円 | 30万〜80万円 | +30万〜80万円 |
| 行政書士報酬 | 不要 | 設立時100万〜200万円 | +100万〜200万円 |
| 登記費用 | 不要 | 15万〜25万円 | +15万〜25万円 |
| 社会保険料(法定福利費) | 国保・国民年金 | 厚生年金・健康保険(会社負担分) | +数十万〜数百万円 |
例えば、法人登記や定款変更、理事会・社員総会の開催といった手続きが不要で、日常の経理業務や税務申告も比較的シンプルです。また、法人化にともなう社会保険や厚生年金の加入義務がなく、その分の保険料負担も発生しません。
事務作業を外部に依頼する場合のコストも抑えられ、経営資源を本業の診療や患者サービスに集中しやすくなります。事務手続きの負担が減ることで、スタッフの負担軽減や運営効率の向上にもつながるでしょう。
医療法人は都道府県の監督や税務調査の対象となりやすく、運営状況や財務内容のチェックが厳しくなる傾向があります。これに対して個人事業のクリニックは、監督や調査の頻度が比較的少なく、行政からの指導や書類提出の機会も限定的です。
監督・調査の違い
個人開業医
医療法人
事業報告書や経営情報の提出義務もなく、監査や総会議事録の作成などの事務作業も発生しません。そのため、過度な監査による精神的な負担や、細かな法令遵守への対応に追われることが減り、本来の診療業務に集中しやすい環境が整います。
監督の緩やかさは、安心して日々のクリニック運営に専念したい医師にとって大きな安心材料となります。
個人事業の場合、事業承継や相続の際に柔軟な対応が取りやすい点も大きなメリットです。
個人事業の事業承継の柔軟性
1. 手続きの簡素さ
2. 相続時の選択肢
3. 後継者不在時の対応
家族や親族へクリニックを引き継ぐ場合も、手続きが比較的シンプルで、個人名義での資産や契約の移転が容易です。医療法人では理事交代や法人資産の扱い、社員総会の開催など煩雑な手続きが必要ですが、個人事業ならば経営者の意思に基づき、資産や権利の移転が行えます。
また、相続税や贈与税の対策もしやすく、事前の計画や準備によって家族間のトラブルを防ぐことができます。後継者が未確定の場合や、柔軟に将来の選択肢を残しておきたい場合にも、個人事業での運営は有利です。
安心してクリニックの未来を託せる柔軟性は、多くの開業医に支持されています。
医療法人にしない理由を考えるには、医療法人化した場合にどのようなメリット・デメリットがあるかも理解しておくことが必要です。法人化の有無による違いは、日々の運営や将来の展望、税務や労務管理に大きく影響します。
ここでは、医療法人化の主な長所・短所や、それぞれの経営スタイルが向いているクリニックの特徴について整理し、今後の選択に役立つポイントをまとめていきます。
医療法人化の最大のメリットは、税制上の優遇措置と社会保険の充実、そして経営の安定化にあります。
1. 節税効果
2. 社会保険・福利厚生の充実
3. 資金調達の容易さ
4. 事業拡大・分院展開
5. 事業承継のスムーズさ
法人化すると個人所得税よりも低い法人税率が適用されるため、所得が増加しても税負担を抑えやすくなります。また、役員報酬や退職金の支給など、家族も含めた所得分散が可能で、これが節税対策につながります。
社会保険・厚生年金への加入が必須となり、従業員の福利厚生制度も整いやすく、人材の採用や定着を後押しします。さらに、金融機関からの信頼性が高まりやすく、事業拡大や設備投資、新規プロジェクトの資金調達にも有利です。
将来的な事業承継や分院展開など、組織としての成長を見据える場合も、医療法人化は大きな武器となります。
一方、医療法人化には慎重な検討が必要なデメリットも存在します。
1. 設立・運営コストの増加
2. 事務負担の増加
3. 経営の自由度制限
4. 解散時の制約
まず、設立や運営には多くの手間とコストがかかります。定期的な事業報告書や決算報告、理事会や社員総会の開催など、法的な手続きが増え、事務作業の負担が大きくなります。社会保険料や外部専門家への報酬など、固定費も上昇します。
経営の自由度が制限されやすく、利益配分や資金の使途も法律で管理されるため、個人事業と比べて柔軟な運営が難しくなる点は見逃せません。また、理事長であっても社員総会の決議によって辞任を求められるリスクや、法人解散時には残余財産が国などに帰属するなど、特有の制度的制約もあります。
こうした側面を理解し、納得したうえで法人化を選ぶことが大切です。
個人事業と医療法人、どちらの形態が適しているかは、クリニックの規模や経営者の方針、将来の展望によって大きく異なります。
個人事業が向いているケース
医療法人が向いているケース
たとえば、年間の売上や所得が比較的小さいクリニックや、今後も規模拡大や分院展開を考えていない場合は、経営の自由度が高く事務負担も少ない個人事業が向いています。
反対に、売上が一定額を超え、節税効果が大きく見込める場合や、スタッフ増員や将来的な事業承継・分院展開を視野に入れている場合は、医療法人化の恩恵が大きくなります。
経営者自身のライフプランや家族の関与度合い、地域医療への貢献の仕方など、現状と今後の目標を見据えて最適な選択を行うことが重要です。
医療法人にしない選択をする場合、個人事業としての運営には一定のデメリットも伴います。特に税制面や社会保険、事業の将来展望に関しては、法人化しているクリニックと比べて不利になる場面が出てきます。
ここでは、医療法人にしないことで生じやすい主なデメリットについて詳しく解説します。
個人事業主としてクリニックを運営している場合、所得税は累進課税が適用され、所得が増えるほど税率が高くなります。
所得税率の累進課税
| 課税所得 | 所得税率 | 住民税率 | 合計税率 |
|---|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 10% | 15% |
| 195万円超330万円以下 | 10% | 10% | 20% |
| 330万円超695万円以下 | 20% | 10% | 30% |
| 695万円超900万円以下 | 23% | 10% | 33% |
| 900万円超1,800万円以下 | 33% | 10% | 43% |
| 1,800万円超4,000万円以下 | 40% | 10% | 50% |
| 4,000万円超 | 45% | 10% | 55% |
法人税率との比較
具体的な税負担の差額
年間所得2,500万円の場合:
年間所得が高くなると、最大で55%(所得税・住民税合算)の税率が課せられることもあり、せっかくの収益が税金で大きく目減りするリスクがあります。一方、医療法人であれば法人税率は最大でも約23%に抑えられるため、所得が多いほど節税効果が大きくなります。
個人事業では家族への給与も青色事業専従者給与として制限されるため、所得分散による節税が難しい点も大きなデメリットです。さらに、退職金制度が利用できず、退職所得控除などの税制優遇も受けられません。
こうした点から、個人事業のままでは税負担が重くなりやすいのが現状です。
医療法人化しない場合、社会保険や厚生年金の適用範囲が限定され、経営者本人や従業員の福利厚生面で不利になることがあります。
社会保険の適用範囲の違い
| 項目 | 個人事業 | 医療法人 |
|---|---|---|
| 経営者の年金 | 国民年金(月額16,980円、2024年度) | 厚生年金(報酬に応じて変動) |
| 将来の年金受給額 | 満額で月額約6.8万円 | 月額15万〜25万円程度(報酬による) |
| 健康保険 | 国民健康保険 | 協会けんぽまたは健康保険組合 |
| 傷病手当金 | なし | あり(病気・ケガで休業時の所得保障) |
| 従業員の社会保険 | 5人未満は任意加入 | 全員強制加入 |
採用・定着への影響
個人事業主は原則として国民健康保険・国民年金に加入し、スタッフも一定規模以下では社会保険の加入義務が発生しません。そのため、スタッフの生活保障や採用・定着の面で、法人化しているクリニックに比べて魅力が劣るケースも見受けられます。
特に将来的な年金受給額や医療費の自己負担割合など、長期的な視点で考えると、医療法人の方が安定した福利厚生を提供しやすい環境といえるでしょう。スタッフの満足度や人材確保の観点からも、社会保険の適用範囲は経営上、重要な要素となります。
個人事業のままクリニック経営を続けていると、将来的な事業拡大や多拠点展開、事業承継の際にさまざまな制約が生じます。
事業拡大の制約
事業承継の複雑さ
分院や新規事業所の開設には個人名義での手続きが必要になり、組織的な展開が難しくなります。また、事業承継時には診療所の名義変更や各種契約の締結、従業員の再雇用手続きなど、多くの煩雑な作業が発生します。
医療法人であれば、法人自体が継続するため、経営者交代や相続時の手続きもスムーズです。個人事業では事業主が不在となった場合、廃業や再度開業する手間が増え、後継者への引き継ぎや資産移転も複雑化します。
今後の成長や世代交代を見据えるなら、医療法人化の検討が必要となる場面が増えていくでしょう。
医療法人にしない理由が明確な場合でも、クリニックの成長や経営環境の変化によっては、法人化を検討するタイミングが訪れることがあります。
ここからは、売上や従業員数など客観的な基準や、経営戦略・ライフプランとの関係、専門家の活用など、医療法人化を考える際のポイントについて詳しくご紹介します。
医療法人化の検討タイミングとして、年間売上や従業員数は重要な判断材料となります。
法人化を検討すべき目安
1. 事業所得ベース
2. 診療報酬ベース
3. 従業員数ベース
4. その他のタイミング
おおよそ年間事業所得が1,800万円を超える、あるいは社会保険診療報酬が5,000万円を超える規模になった場合、個人事業のままでは節税効果が十分に得られないことが多くなります。
また、スタッフの数が増えて社会保険の適用義務が発生したり、福利厚生の充実が必要になった時も、法人化のメリットが際立ちます。医療機器の償却期間が終わるタイミングや、事業拡大・分院開設の予定がある場合なども、法人化を本格的に検討する目安となるでしょう。
クリニックの成長段階に応じて、最適な法人化の時期を見極めていくことが大切です。
医療法人化の判断には、現在の経営状況だけでなく、今後の事業ビジョンや経営者自身のライフプランも大きく関わります。
経営戦略からの検討
法人化が有利なケース
個人事業が有利なケース
ライフプランからの検討
法人化が有利なケース
個人事業が有利なケース
将来的に地域医療への貢献を広げたい、家族へスムーズに医院を継承したい、あるいはご自身の引退後の生活設計や資産形成を重視したい場合など、目指す姿によって最適な選択肢が変わります。
法人化することで事業承継が容易になり、役員報酬や退職金制度を活用して安定した生活設計も可能になります。反対に、現状維持を重視したい、後継者がいない、手続きの煩雑さを避けたいという場合は、個人事業のままでも十分運営できるケースもあります。
将来像に合わせた柔軟な判断が重要です。
医療法人化を検討する際には、税制や社会保険、登記や経営管理など、多岐にわたる専門知識が求められます。
相談すべき専門家
1. 税理士
2. 社会保険労務士
3. 行政書士
4. 司法書士
5. 医療経営コンサルタント
相談のタイミング
税理士や社会保険労務士、行政書士などの専門家に早めに相談することで、クリニックにとって本当に必要な手続きや、法人化のベストタイミングを見極める手助けとなります。
専門家のアドバイスを受けることで、複雑な申請手続きの負担を減らし、見落としがちなリスクや注意点も事前に把握できます。経営戦略やライフプランを具体化するためにも、経験豊富なプロの意見を積極的に活用しましょう。
医療法人にするかどうかの判断は、多くの開業医にとって重要な経営判断です。ここでは、よくある質問とその回答をまとめました。
年間所得によって有利不利が変わります。年間事業所得が1,800万円以下の場合は個人事業の方が有利または同等のケースが多く、1,800万円〜2,000万円を超えると医療法人の方が税制面で有利になる傾向があります。ただし、法人維持コスト(税理士報酬、社会保険料の会社負担分など)も考慮する必要があるため、税理士と相談してシミュレーションを行うことをお勧めします。
いいえ、必ずしもそうではありません。法人化による節税効果は、所得の規模や家族構成、役員報酬の設定方法などによって大きく変わります。また、社会保険料の会社負担分や外部専門家への報酬増加などのコストも発生するため、総合的に判断する必要があります。小規模クリニック(年間所得1,000万円以下)では、法人化によってかえって負担が増えるケースもあります。
法律上は可能ですが、非常に困難です。医療法人を解散するには、都道府県知事の認可が必要であり、残余財産は国等に帰属するため、実質的に個人に戻すことはできません。また、解散手続きも煩雑で時間とコストがかかります。そのため、法人化は慎重に判断する必要があります。
後継者がいない場合でも、法人化のメリットはあります。例えば、第三者承継(M&A)を検討する場合、医療法人の方が引継ぎがスムーズです。また、節税効果や退職金制度の活用など、経営者自身のメリットもあります。ただし、将来的に閉院を予定しており、5年以内など近い将来の場合は、法人化のメリットが薄くなるため、個人事業のままの方が良いケースもあります。
一般的に、設立認可申請から法人登記完了まで6ヶ月〜1年程度かかります。費用は、行政書士報酬、税理士報酬、登記費用などを含めて100万円〜200万円程度が目安です。都道府県によって申請時期が決まっている場合もあるため、早めに専門家に相談することをお勧めします。
はい、本当です。医療法人は非営利法人のため、剰余金の配当が禁止されています。利益は法人内に留保され、設備投資や人件費、将来の事業拡大などに使用されます。経営者が利益を受け取るには、役員報酬として社員総会で承認を得る必要があり、個人事業のように自由に引き出すことはできません。この点が、個人事業を選択する大きな理由の一つとなっています。
医療法人にしない理由には、経営の自由度や事務・コスト負担の軽減、事業承継の柔軟さといったメリットがある一方、税制や社会保険、事業拡大・承継面でのデメリットも存在します。
個人事業を選ぶ主な理由
法人化を検討すべき目安
クリニックや医院の規模、経営者のライフプランや将来展望を総合的に考慮し、専門家の意見も参考にしながら最適なタイミングと選択肢を見極めることが、後悔しない医院経営への近道となります。
法人化は一度実行すると元に戻すことが非常に困難なため、慎重な判断が必要です。税理士や医療経営コンサルタントなどの専門家に相談し、複数のシミュレーションを行ったうえで、自院の現状と未来を見据えた納得のいく判断をしていきましょう。
どちらを選択するにしても、重要なのは「なぜその選択をするのか」を明確にすることです。自院の経営方針や価値観に合った形態を選び、地域医療に貢献し続けられる体制を築いていくことが、最も大切なポイントといえるでしょう。
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この記事を書いた専門家(アドバイザー)
著者情報 柴田雄一
株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役
米国MBA留学後大手経営コンサルティング会社を経て2004年当時では珍しかった医業経営コンサルティングに特化したニューハンプシャーMCを設立。20年以上にわたる深い知見とユニークな視点からの具体的な支援がクライアントからの高い信頼を獲得し続けている。またそのユニークな視点を言語化した医業のマーケティング、スタートアップ(開業)、マネジメントをテーマにしたプロフェッショナルシリーズをそれぞれ出版し、影虎(本の登場人物の経営コンサルタント)ファンも数多い。
南ニューハンプシャー大学経営大学院(MBA)卒