医療経営プロフェッショナル柴田雄一「ニューハンプシャーMC」

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人事部長って必要なのか? (43)

一般企業にあって病院にないもの

ある程度以上の規模の会社組織には通常配置されている役職にもかかわらず病院という組織にはないものがあります。「人事部長」です。一般的な病院組織図は、院長をトップに、診療部(科)、看護部、事務部があり、各科診療科部長、看護部長、事務長という役職者を配置しています。一般の会社では前述した人事部以外にも、財務部、営業部、総務部、企画開発部などマネジメント領域ごとに分かれて独立した部門が配置されています。一方で、病院は資格(職種)ごとに部門形成されていることが多く、結果として経営マネジメントのほとんどを事務長が職責を負うことになるのです。 

特に人件費が収入の半分以上を占める労働集約型で、人の管理が重要であるにもかかわらず、今まで私が出会った多くの病院関係者で、“人事部長”という肩書きの人物に出会ったことがあるのは記憶においては2人しかいませんでした。 

人事部の業務といえば最初に思いつくのが「採用」です。病院は資格者の集合体です。この人事部を置かない背景には、院長や診療科部長が出身大学の医局やその他の人脈を利用して医師を招聘し、看護部長は看護学校を訪問してリクルート活動しているほうがやりやすいということもあります(ありました)。しかしながら人事(管理)領域の仕事は採用だけではありません。欧米では、Human Resource Management(人的資源管理)として、確立された専門領域となっているように、他にも組織体として必要な仕事が多くあるのです。 

人と組織に分けてマネジメントを考える

それではHuman Resource Managementという学問体系を通して、どのような管理領域があるのかを紹介してみます。HRMは、組織のマネジメントと人のマネジメントに大別されます。組織体には目的や使命、そして目標があります。そのため、個々人が最も効率よく機能しうる組織形態をつくり上げていなかければなりません。そこで、採用、適正配置、人事考課、報奨、人材開発といった人事システムが必要となってきます。

一時期、多くの病院で人事考課制度を導入する動きがありました。全国の病院の4分の1以上が認証取得している病院機能評価の評価項目でも、適切な人事考課をすることが求められています。組織においては、人に対し“平等”と“公平”を使い分けていくことが必要になります。効果的に人件費を配分するためには、適正な人事考課システムも一つの手段といえます。能力の高い人を採用し、能力開発を行った上で、その人が最大のパフォーマンスを発揮できるような部署やポジションを与えます。そして、きちんと評価し、それに見合った報酬(報奨)を用意していくことで、組織が最大限機能していくことになるのです。

次は人のマネジメントです。組織のマネジメントは、基本的には人を集団で捉えますが、人のマネジメントは個人に焦点を当てていきます。個々人の士気の向上は業績に直結します。士気とは今風にいえばモチベーションのことです。この領域も学術的、実践的を問わず研究が進んでいます。

「人はなぜ働くのか」というシンプルな問いに対し、さまざまなアプローチが日々開発されてきています。金銭的に動機付けさせるのか、集団への帰属意識や自己顕示欲を刺激させるような社会的動機付けをしていくのか、あるいは、自分のやりたいことが達成できる環境を用意することでの自己実現を果たす動機付けなどもあります。

リーダーシップ論も人のマネジメントの範疇に入ります。極論すれば、自分以外のもう一人いれば、リーダーシップは発揮できます。したがって、多くの個人が公式・非公式、数の多い少ないにかかわらずリーダーとなり、そこでリーダーシップを発揮できるとなれば、組織は強くなります。

リーダーシップはスキルであって、学べば誰でも磨けるものです。HRMもまたスキルです。これを読まれている病医院の院長先生も、リーダーとして“HRM磨き”をしてみてはいかがでしょうか。

株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一