医療経営プロフェッショナル柴田雄一「ニューハンプシャーMC」

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夢と魔法の国の「待ち時間」 Part2 (53)

待ち時間をつくらない仕掛け

人気とサービス提供までの待ち時間は比例関係にあります。例えば、日本随一の集客力を誇る「夢と魔法の国」、ディズニーランド。そこでの滞在時間の大半がアトラクションなど“待っている時間”に費やされます。それでも人が何度も繰り返して足を運ぶのは、ミッキーマウスの“魅力”だけでなく、人気に比例する待ち時間への対応にも緻密な計算がされていると前回の連載で述べました。 

そもそも、待ち時間とはなぜ起きるのでしょう。理論的にいえば、その発生原因は交通渋滞のそれと同じです。交通集中による渋滞。事故や工事など車線規制による渋滞。合流地点やサグ(下り坂から上り坂にさしかかる凹部)で無意識にブレーキを踏むことが連続して起こる渋滞。これらの渋滞が起きる部分をボトルネックといいます。ウイスキーボトルなどが注ぎ口に向けてしぼんでいる様を表現した言葉です。渋滞緩和や解消のためには、このボトルネック対策に腐心します。ボトルネックで滞留を抑えるための方法は、「拡大」「短縮」「分散」「選別」です。ひと昔前の渋滞発生ポイントといえば、有料道路の料金所でした。この場合、①レーンを増やす、②ETC導入でレーン内の滞留時間を減らす、③ETC時間帯別料金体系を導入して分散させる、④ETC未装着や二輪車と装着車を分ける――といったようなイメージです。 

ディズニーランドにおいても、この4つの方法をベースに同様の待ち時間対策が施されています。例えば、ディズニーランドは毎年のように新規アトラクションを導入しています。隣接してディズニーシーも2001年から稼働しています。つまり、「拡大」によってキャパを増やしているわけです。また、前回の連載で、人気のある特定のアトラクションに優先的に入場できる制度でファストパス制度について触れました。チケットを取るために園内に散らばっている特定のアトラクションを客に巡らせることで「分散」もできます。そして、チケットを取った客は自身の待ち時間が「短縮」されます。 

人気の証とあきらめず、現状の見つめ直しを

医療機関の外来待ち時間にも応用可能です。待ち時間発生要因は 、当然“診察”です。そこ、“診察”というボトルネック対策を先の4つの方法に則って例示してみます。 

<拡大>
・診察枠を増やす
・医師、看護師、クラークを増やす
・受付・会計窓口を増やす
一番シンプルで効果が高い一方で、コストがかかり、医師不足などの状況から現実的には簡単ではありません。 

<短縮>
・中待合の設置や・診察前の脱衣のお願い
・問診票の事前記入
・Web順番予約システムの導入
基本は、診察時間内にあるムダな時間を削ることです。中待合によって呼ばれてから入室までの時間を短縮したり、冬など防寒着の脱衣を入室前にしたりしておけば診察室内でのムダが省けます。 

<分散>
・混雑状況の公開
・混雑予報の実施
・診療予約制の導入
患者を分散させるのは、混雑具合を患者へ知らせることが最も効果的です。渋滞情報や年末時の渋滞予測と同じです。 

<選別>
・トリアージナースの配置
・専門外来の設置
・初診専用外来の設置
トリアージナースや総合診療、専門外来などであらかじめ患者を選別してムダを削ります。 

待合室が患者であふれ返ることは、人気の証とそこであきらめずに、この4つの視点で自院の待ち時間を考えてみてはいかがでしょうか。

株式会社ニューハンプシャーMC 
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一