Column

不健全経営のすゝめ

※柴田雄一が連載中の『卸ニュース「病医院経営のチェックポイント」(IQVIAソリューションズジャパン(株)発行)を転載した記事となります。

2025年問題(270)


車が空を飛んでいた未来

明けましておめでとうございます。2023年は昭和生まれの筆者からすると、はるか遠い未来でした。車は空を飛び、人型のアンドロイドが街に溶け込んでいて、街並みももっと無機質で人々も肌にピッタリしたウェットスーツのような服をまとい現代の映画でも描かれる近未来的な世の中を想像していました。漫画ドラえもんが連載開始の頃の誕生日が、2012年9月3日という設定でした(現在は2112年9月3日)。連載開始は1969年です。その当時からすれば、21世紀つまり現代にはタイムマシンやひみつ道具が存在している世の中を空想していたことになります。

もちろん、誰もが持ち運べる無線電話機や壁に張り付くテレビモニター、自動運転システム等々、実現している技術も少なくありません。またネガティブな未来予想図もありました。ノストラダムスの大予言が大流行し、子供にとって世紀末思想となる終末論は恐怖でしかありませんでした。幸い(?)にも1999年7月に核戦争も大規模な隕石の地球への衝突もなく人類滅亡の日を迎えることはありませんでした。一方でそんなことは現実ではないであろう未来が訪れることもありました。今回の新型コロナウィルスのパンデミックは、それこそ映画の中での出来事だと勝手に思っていましたがそうではなかったということです。いずれにせよこの先世の中がどうなっていくのかは神のみぞ知るということなのかもしれません。
とはいえ、過去の延長から未来を予測することは可能です。技術、政治経済など様々な分野で予測されていますが、特に近年話題にあがるのが環境問題です。例えば30年前に地球温暖化に注目を集めて以来、持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けた取り組みが年々活発化しています。日本国内においても、様々な未来予測が存在します。それは「2025年問題」です。すでに予測ではなくほぼ起こりうる問題です。この問題について、医療に携わる方であれば一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

第2四半世紀に想いを馳せて

「2025年問題」とは、団塊の世代と言われる第一次ベビーブーム(1947~49年)で生まれた人達が、2025年頃に75歳以上となり、日本人の5人に1人が後期高齢者となります。要するに日本を支えてきた側だった世代が、今度は医療等のサービスを受ける側になります。一方で、支える側の生産年齢15~64歳の人口は減ります。2010年では75歳以上1人に対して5.8人で支えていましたが、2025年には3.3人で支えていかなければなりません。この急激な高齢化社会となっていくことで、年金医療等に関する社会保障財政のひっ迫が起きてしまう懸念があるといった問題のことです。

そのため現行の皆保険制度のままでは維持できないでしょう。少子化が進み人口も増えない日本の国力が上がることは現時点では期待薄です。となれば医療費全体の抑制策に走らざるを得ません。高齢化によって医療ニーズは増えますが、医療費抑制に向かえば経営の存続が難しくなる病医院も当然増えてきます。また生産人口が減るということは、人不足の問題もより深刻化してきます。
マクロ的にみれば病医院経営の未来予想図は決して明るくはありません。だからこそ、それに経営者としては、その問題に立ち向かうために、選ばれる医療と付帯サービスの供給体制を構築し、また今後減りゆく保険診療費にも耐えうる財務体質の強化と改善を行う必要があります。更にはこれからも続く慢性的な人不足にも負けないように、就労環境や条件の改善に努め、選ばれる職場づくりを追求していくことが求められます。また「2040年問題」では2025年から僅か15年間で生産人口がこれまで経験のないスピードで減少して益々労働力不足となってしまいます。しかも「2054年問題」としてその年まで75歳以上が増加の一途をたどります。人類においては未知の領域です。新年の抱負のみならず第2四半世紀の抱負に想いを馳せるのもよいかもしれません。
株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一

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