Column

不健全経営のすゝめ

※柴田雄一が連載中の『卸ニュース「病医院経営のチェックポイント」(IQVIAソリューションズジャパン(株)発行)を転載した記事となります。

待ち時間対策へのヒント (45)


首都高がヒント!?

患者が集まらなければ経営上問題です。しかし、患者が集まり過ぎたら、また別の問題が発生します。待ち時間です。多くの医療機関で何らかの対策を講じてようとしていますが、効果が出にくいうえにその効果度合も分かりにくく、半ばあきらめてしまっているのではないでしょうか。
私自身、対策が難解なこの問題に取り組んできました。その際、ある一見するとまったく違った事例がとてもヒントになりました。それは、東京にある「首都高速道路」です。まず首都高といえば、いつでも渋滞で道路も複雑に入り組んでいて分かりにくく、ドライバーにとってあまりイメージが良いとはいえません。そんな首都高だからこそ、そのネガティブな部分を改善しようと、日々対策を講じようとしています。渋滞が全くなくなるわけではありませんが、その対策の効果は確実に出ています。ある渋滞に関するデータを見ると、2005年度のピークに比べて08年度に約4割減となり、11年度でも約2割減となっています。私もよく首都高を利用しますが、以前よりは渋滞が緩和されてきているように思いますし、利用もしやすくなったと私自身も感じています。

しかし、なぜそれが待ち時間と関係があるのでしょう。実は従来、渋滞と待ち時間は同じ理論で語られていました。「待ち行列」というものです。この理論を基に予測を立てた上で料金所やATM、スーパーのレジの設置数などを調整したりしています。要するに渋滞の原因と待ち時間発生の原因が似通っており、渋滞対策が待ち時間対策に応用可能となるわけです。

渋滞学と待ち時間

ボトルネックという言葉をご存じでしょうか?通常のボトルは注ぎ口に向かって狭くなっています。例えば、砂時計の真ん中にある細くなっている部分がボトルネックです。砂がそのボトルネックで滞ることを逆に有効利用したものといえます。渋滞で真っ先に思いつくのはボトルネック対策です。首都高では、料金所の渋滞はETC導入によってほぼ解消されました。ほかには、合流地点や各ジャンクションの新設や改良、バイパスとなる道路の新設などがあります。
こうした対策はハード面でコストがかかります。これを病医院の待ち時間対策に応用しようとすると、もう1診増やしたり、作業の簡素化のために電子カルテや会計システムを導入したりするなど、効果も出やすいのですが、気軽にできるものではありません。首都高では、コストをかけずにできることにも積極的に取り組んでいます。標識や区画線などを改良したり、渋滞情報をリアルタイムで提供できるようなサインを設置したり、ホームページでもリアルタイム情報だけでなく、渋滞予測や所要時間案内を行ったり、料金時間帯割引なども実施しています。
標識などの改良で車の流れを改善できるように、特に人の移動の多い大きな病院では表示を見直すことで患者の滞留も緩和できます。また、リアルタイムな渋滞情報によってドライバーのストレスを緩和できるように、最近では待ち時間システムを導入している病医院も増えてきました。患者心理としては同じ時間待つにしても、あと何人(何分)待つのかという情報を得られるだけでストレスが随分緩和されます。待ち時間対策は短縮だけではありません。長く感じさせないことも対策です。待ち時間の情報提供以外には、待合室へのテレビや雑誌、キッズコーナーの設置などもこの範疇です。渋滞情報は予測も含めて交通集中を減らしますが、時間帯別料金割引も同じ考え方です。病医院でも予約制をうまく導入すれば、患者の集中を幾分分散することが可能です。待ち時間予測をホームページ上に掲載するだけでも有効です。
なお、「首都高渋滞対策アクションプログラム」と検索すれば、ネット上で見ることができます。待ち時間解消と意気込み過ぎず、まずは緩和する程度と考えて取り組んでみてはいかがでしょうか。

株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一

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