最近、巷に“カリスマ”が氾濫しています。カリスマ美容師、カリスマモデル、カリスマ店員など、マスコミがこぞって人気のある人や憧れの対象となる人物に対して枕詞のように使っている、いわゆる流行語になっています。そもそもカリスマとは新約聖書で「神からの賜物(ギフト)」を意味するものでした。
この限定的に使われてきた宗教用語が世の中に広まるきっかけとなったのは、「政治家や預言者など特定の個人に宿る超自然的、超人的、非日常的な資質や能力」を持った一個人が大多数を支配(服従)する理由として、ある社会学者が取り上げたことによります。その後もリーダーシップについての研究が進み、カリスマといわれるリーダーの行動特性がさまざまな形で定義付けられてきました。今回はカリスマティック・リーダーシップというものをベースに、リーダーシップについて語ってみたいと思います(参考:Conger-Kanungo Scale of Charismatic Leadership)。
まず「現状との関係性」です。カリスマティック・リーダーは変化を常に求めています。今を否定して新たなモノやコトを創造するエネルギーを持っているといわれます。また、「目標」を設定するに当たっては先のとおり現状を否定する傾向にあることから、今とは異なる理想的なビジョンを描いていきます。よって「専門性」についてのとらえ方も、革新的な方法を探求し、現状を超えたいという意志を常に見せていく傾向にあります。
このように変革という視点にあるため、高い「感受性」を持っています。同じ事象でもとらえ方が人とは違うからこそカリスマ性が出てくるものなのです。「パワーの源泉」においては、専門性や人からの尊敬、そして英雄としての称賛などに基づいており、ビジョン達成を常にリードしていくことがモチベーションとなっています。そして、リーダーの後についてくるフォロワーと呼ばれる人々との「関係性」については、フォロワーを変革の支持者に変えていく立場になっています。
病医院の院長には、3つの立場があります。まずは当たり前ですが、医者としての立場です。次に経営者です。そして、3つ目が監督者です。結果として、医者、経営者、監督者、それぞれの立場でのリーダーシップを発揮することが必要となってきます。
特に大きな規模の病院の理事長や、複数の診療所を開設したり介護系を展開したりしている院長先生は、漏れずにリーダーシップ力が高いものです。これまで経営面において意欲的な先生にお会いしてきました。だからといって、カリスマ性を強烈に感じる先生ばかりではありません。冒頭、世の中にカリスマがはん濫していると申し上げましたが、“カリスマ”が世に多くいることは本来の意味からするとあり得ないのです。それでも成功を収めているノンカリスマティックな経営者のリーダーシップがあります。それは、どのようなものなのでしょうか。
これまでの経験から、リーダーシップの形式が2つに集約されるように思います。1つ目は、前述のカリスマティック・リーダーの要素の全てではなく、一部が秀でているパターンです。例えば、「専門性」においては革新的な医療を推進することに長けた先生や、前衛的な夢を語り、皆を引き込んでいくのがとても上手な先生です。
もう一つのパターンは、カリスマティック・リーダーシップの逆パターンを徹底的に追求することです。変革ではなく保守です。過去を含めた現在を肯定し、革新的に物事を進めるのではなく、現状レベルに磨きをかけていく姿勢を貫いている先生です。私も経営者として自分にカリスマ性があるとは思えません。しかし、リーダーとしての立場から逃げることはできません。だからこそ、意識して自分のリーダーシップの型を作ることが必要であると、経営コンサルタントとして、また経営者として経験を積むほど強く感じています。
株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一