Column

不健全経営のすゝめ

※柴田雄一が連載中の『卸ニュース「病医院経営のチェックポイント」(IQVIAソリューションズジャパン(株)発行)を転載した記事となります。

老後の資金と確定拠出年金② (118)


節税メリットを確実に享受できる制度

現役である期間が一般的に他の人に比べて長く、老後と言われるような年齢のその頃には相応の資産が膨らんでいるであろう開業医は、老後資金に対する備えをしなければならないという動機が生まれにくいものです。もちろん節税や、法人化をきっかけに、将来に利益を回していくなどの手法を取ったり、資産形成に興味を持ったりなどで、結果的に老後の資金までも蓄えている先生も多くいらっしゃいます。いずれにしても老後資金を意識して蓄えていくために原資が必要となりますが、その支払い原資は2つの見方ができます。税引き前の所得(売上)か、税引き後の所得かとなります。同じ100円を貯めるにしても税引き前と税引き後の100円ではその価値は違います。当然ながら税引き前のほうが有利です。そこで税引き前の所得を利用して、老後資金を貯める制度の代表格として「個人型確定拠出年金」を前回ご紹介しました。

これは限度額までは所得の控除対象となり、運用益もまた非課税、そして年金で受け取る際にも税率が通常の所得よりも低く設定されるなど節税のメリットを享受できる制度です。それだけでも確実にメリットは出てきますが、ただし運用益が出るということは、損も出る可能性があり、しかもこの制度は民間での運用です。よって運用先も商品も加入者自身で選ばなければなりません。元本確保タイプもありますが本制度のメリットを最大限に享受していくためには高い利回りを期待しても良いと個人的には思っています。その場合には、確定拠出年金を通じて購入できる投資信託でポートフォリオを組みますが、その際あまり手を出さないほうが良いであろう商品を知っておくことがポイントです。

インデックス・ファンドで最大の効果を

まずアクティブ・ファンドです。これは市場の平均株価(例えば日経平均株価)のパフォーマンスを超える運用を目標として行います。そのために運用にも手間(売買頻度、情報収集、分析などがより必要)がかかり、それが手数料コストに反映してきます。リスクも負うことになります。年金という特性を考えれば、そのリスクが相応かといえば筆者はそうは思いません。またバランス・ファンドといわれる、様々な資産をバランスよく配分して運用するものがあります。アクティブ・ファンドに比べれば手数料は低くなりますが、まだ割高感があるように思います。また投資の知識が備わっていれば問題ありませんが、そうでなければどういったリスクを取っているのか理解していないというリスクを負うこととなり、不向きな商品だと思います。また元本確保型では、文字通り元本と利回りが確保されるという商品ですが、インフレ傾向のなかではせっかくの運用益非課税という恩恵を十分受けられないと考えています。また中途解約で元本割れを起こす商品もあるため注意が必要です。

では何が確定拠出年金の運用に向いているかと聞かれたら、インデックス・ファンドだと答えています。前述のアクティブ・ファンドは市場平均を超えるパフォーマンスを目標としているが、インデックス・ファンドは市場平均と連動するものです。アクティブ・ファンドがハイリスクハイリターン、で元本保証型がローリスク・ローリターンとするならば、インデックス・ファンドはその間に位置するといったところです。また、確定拠出年金という性格上、長期の運用です、手数料コストの差も大きく影響してくることもこのインデックス・ファンドは合理的です。
そこでポートフォリオの考え方として、日本株と海外株(特に先進国)それぞれに連動した2種類のインデックス・ファンドの組み合わせが合理的だと考えています。リスクの低減に応じて元本保証型を組み込むのもアリですがが、資産に幾分の余裕がある開業医ということを想定しているのであえて配分することはないように思います。当然ながらこれは筆者の見解であり、専門家の意見をしっかり聞いて自己責任でご判断ください。
株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一

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