Column

不健全経営のすゝめ

※柴田雄一が連載中の『卸ニュース「病医院経営のチェックポイント」(IQVIAソリューションズジャパン(株)発行)を転載した記事となります。

利息は半分以下? (56)


ファイナンシングという言葉

ファイナンシング――つまり資金調達の意で、事業に必要な資金を集め準備することです。方法を大別すれば、資本と負債です。資本は、株式会社ならば株主、医療法人ならば基金拠出者などから調達することになります。負債とは、一般的にイメージする金融機関からの通常の貸付や手形貸付、社債などです。とはいえ、医療法人格となると株式も社債も発行できず、一般市場から広く公募して資金調達ができません。よって、それ以外の方法に頼らざるを得ません。例えば、医療機関債という医療機関が行う金銭消費賃貸契約です。その他ファクタリングという診療報酬債権流動化という約2カ月後に基金などから支払われる予定の診療報酬を担保にした資金調達の方法です。他にもコミットメント・ライン、シンジゲート・ローン、リースバックなどがあります。

一部並べただけでも、聞いたことのない単語だらけだと思います。何か怪しい(?)印象を受けられたかもしれません。このように資金調達や保険サービスなども含めて、ファイナンスの分野全般に抵抗感をお持ちの先生も散見されます。一般的に所得が多くなればなるほど、節税を通じてさまざまなファイナンス知識を得るようになりますし、病院など投資額も増える経営者などは必要性から同様の知識を得ています。しかしながら、個人で開業されている先生は、案外ノータッチということが多々あります。
個人開業の際、金融機関の審査ハードルも非常に低いため、他の業種ではあり得ないような条件、ある意味では言い値で融資条件を出してきたりもします。それは他の業種よりも圧倒的に貸し倒れリスクが少なく、支払いもよいと金融機関が見ているからです。そうなれば、当然最初から資金調達に苦労することも少ないので、なかなか知識を得る機会もありません。また、ファイナンスには難しい言葉が並び複雑な印象を受けがちです。節税対策と同じで、実際には知っているか否か、利用するかしないかで結果が違ってくるものです。

融資は「金利」だけではない

通常、勤務医時代から資金調達に明るい先生はあまりいません。住宅ローンや学資ローンで借入する際に少し知識をかじるくらいではないでしょうか。それがいきなり開業するとなれば、数千万から億という単位のお金を調達することになります。融資条件は交渉によって決まります。常識的な範囲であれば、こちらの言い値でも通ることは前述しましたが、知識が少ないことにより相手の言い値で融資を受けているケースも散見されます。民間の銀行も商売です。当然自行に有利な条件を提示してきます。しかしながら、意外とこの大事な部分に気づかず、銀行に何か公的機関のようなイメージで接してしまい、交渉しないで契約してしまうことがあるのかもしれません。

いくつかの銀行と交渉し、一番金利の低いところから融資を受けたので、自分は当てはまらない――そうお思いではありませんか。しかし、事業性融資の場合、個人で借り入れる住宅ローンの金利と同じ目線で語れないということは意外と知られていません。個人の住宅ローンの原資は、当然ながら自身の所得です。それは、所得税や住民税など税金をすべて支払った後のお金になります。そこから元本と利息を支払うことになります。事業融資の原資は、売上です。そして利息は経費として損金算入できます。売上から経費を引いた純利益に対して個人事業なら最高50%、法人ならば35%程度の税金を支払うことになり、結果として実質金利は半分以下になるわけです。金利も重要な決定要素ではありますが、事業融資の交渉は担保の有無や融資期間など他の条件を優先したほうが良いこともあるわけです。
かなり端折って説明しているので、言葉足らずで分かりにくいところもあるかと思います。とはいえ、このようなことを初めて聞いたということであれば、ぜひ一度、専門家に相談されることをお勧めいたします。
株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一

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