毎年何十万円もムダづかいしているという事実
私の場合年に2回過去一年を振り返り、これからの一年のことを考える節目があります。元日と年度始めです。元日はプライベートなことを中心に、去年できなかったことや持ち越したこと、新たにやりたいことなど抱負を掲げます。とはいえ、何かの資料やデータを元に決めるわけではなく、頭の中で思い描くだけのことです。
一方で年度始めは、仕事のことを考える時なのであいまいにするわけにはいきません。過去の決算書や事業実績を並べて予算や事業計画を立てていくことになります。規模も予算も大きい病院では必ず行うと思いますが、、個人で開業されている診療所では何もしないところが散見されます。決算書すら見ないという院長先生も少なくないように思います。
決算書の作成は通常、税理士に依頼します。その際、他の申告書類なども含め、決算代行料として数十万円を払っているはずです。それにもかかわらず、その決算書を見ずに活用もしないというのはもったいないことです。ただ、見方がよく分からないということもあるのかもしれません。
この決算書には「損益計算書」と「貸借対照表」というものが含まれています。損益計算書には収入と支出、そして利益が書かれています。つまり、一年間の儲けを示している損益計算書は直感的に理解できるはずです。
何なの? 貸借対照表って
しかし、貸借対照表についてはそうはいきません。こちらは、開業時から決算時点まで積み上げきた自院の財産状況を示すものです。家計を例に分かりやすく言えば、給与などの収入と生活費・遊興費などの支出との収支状況を示しているのが損益計算書です。その結果手元に残った現金や預貯金やローン総額、家や車、保険や株などの金融資産の状態を示しているのが貸借対照表となります。
出所:ニューハンプシャーMC主催 クリニック経営カンファレンステキスト
貸借対照表は左側に「資産」、右側に「負債と資本」という構成になっています。左側の資産は「利益をあげていくために必要なモノやカネ」です。、右側の負債については、他人から借りているお金であったり、まだお金を支払っていない医薬品や材料、機材であったりするので、他人資本と呼ばれます。資本は純粋な自分の財産で、自己資本ともいいます。つまり、誰からも文句を言われずに自由に使えるお金と考えればよいでしょう。ということは、経営の初期段階として安定性を求めるうえでも、この資本部分を膨らます(増やす)ことが必要になってきます。
貸借対照表とのかかわり方
最近、分院の開設や高額医療機器の導入や新設・移転の相談にいらっしゃる院長先生が増えています。経営が次の段階に入ると、損益計算書に示される毎年の利益だけでなく、貸借対照表の右下の資本部分が重要になってきます。この資本の大小によって、いろいろと戦略の規模や実現のスピードが変わってくるのです。したがって、経営の方向性を決めるときにかかわってくるのも貸借対照表といえます。
また、金融機関が健全か否かを判断する重要な指標が、この表にあるということも心に留めておくとよいでしょう。つまり、財務における“不”健全さも隠れているということです。
株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一