Column

不健全経営のすゝめ

※柴田雄一が連載中の『卸ニュース「病医院経営のチェックポイント」(IQVIAソリューションズジャパン(株)発行)を転載した記事となります。

従来の口コミとネットの口コミの違い①(252)


口コミを信じる理由

今や病医院経営において大きな影響を及ぼすまでになってきているインターネット上の口コミですが、従来の対面や電話等から生じる実際の人伝いの口コミもまた医療機関の選択の重要な情報源となっています。しかしながら、近年はネットの口コミの影響度が増すばかりです。実際、十数年前と比べることで一目瞭然です。2008年に日本でスマートフォンが初めて販売された年の頃で誰でもがインターネットに接続できる環境になる機転となったタイミングです。

その頃、初めてクリニックに来院する患者に対して、何でそのクリニックを知ったのかというアンケートの集計結果では、内科を例にとると全体の50%近くが家族や友人知人、職場の同僚などからの人伝いのクチコミでした。それ以外ではインターネットからが15%程度で残りはクリニックの前を通って知った、電柱や駅、その他看板等といった広告宣伝媒体でした。しかし今や人伝いの口コミが20%を越えることは筆者クライアント先ではほぼありません。逆にインターネット経由が60~80%となっています。しかもインターネット経由で来院する80%近くの患者は、Googleで検索してきます。あるクリニックで実施したアンケート結果からそのほとんどがGoogleマイビジネスに書かれている“クチコミ”を参考にクリニック選びをしていることがわかっています。
そもそも人は、なぜ口コミに対して相当程度信頼するのでしょうか。マーケティングの分野では、それをウインザー効果によるものだとされています。利害関係がない第三者による情報は高い信憑性を獲得しやすいという心理状態を言います。クリニック側の人がいくら良い評価をしても、自院をPRしたいという裏があるとどうしても考えてしまうものです。特に家族や自分との距離が近い友好的な関係にある信頼を置いている人からの口コミにおいてはより信憑性を増すことになります。また面識もないインターネットの口コミであっても、それが一定程度の信憑性を生み出しています。

技術が伝わりにくいネットの口コミ

先日、東京の新宿駅から徒歩圏ある美容室で担当となった店長の美容師と散髪中に雑談をしていました。きっかけかは忘れましたが、現状の美容室の集客についての話題になりました。新宿駅は、日本では最も美容室が営業しているであろう場所の一つです。そんな最も競争率の高い場所での話ですが、新規で予約を入れる客のほとんどがインターネット、それもHOT PEPPERビューティーというリクルート社が運営するヘアサロン等の検索・予約サイトだと言います。

最近では自分のホームページすら持たない美容室も増えてきているということで、兎にも角にも集客に関してはHOT PEPPERビューティー頼みなのだそうです。「新宿駅 美容室」とGoogleで検索したところで、自然検索ではHOT PEPPERビューティーや類似するような美容室の検索・予約サイトが上位を占めていて、自身のホームページを持つ意味すら薄れてきているということなのでしょう。雑談の中で、以前は美容師に技術があれば口コミでも客は増えていたそうですが、ここ新宿に限ってはスマートフォンの普及によってそうではなくなっているのだと言います。
新宿という場所柄、若い人の割合が多く価格で選ぶ傾向にあるそうです。またほぼ近隣の生活圏でない客であるため一見さんも多いということも少なからず美容師の技術が伝播しにくい理由があるのかもしれません。しかしそれはインターネットの口コミに偏ってきているからだと感じます。新宿の美容室だけの話ではなく、クリニックにおいても医療という本丸の部分が伝わりににくくなっていると筆者もそれは強く感じています。インターネット上のクチコミという素性も知らないアカの他人の言語のみの情報が、今の口コミの主流を占めてきているからだと考えます。次回、従来の人伝いの非言語が含まれた口コミとインターネット上の言語のみの違い等についてお話します。
株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一

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