Column

不健全経営のすゝめ

※柴田雄一が連載中の『卸ニュース「病医院経営のチェックポイント」(IQVIAソリューションズジャパン(株)発行)を転載した記事となります。

YouTubeの話②(204)


高い世代までもYouTubeを視聴している実態

前回に引き続き、動画コンテンツの話題に触れていきます。クライアント先病医院でもそうですが、動画コンテンツ、特にYouTubeの医療マーケティングに関する利用について論ずると、反応が真っ二つにわかれます。理由はYouTubeを視聴している人としていない人で、そのメディアの影響力の認識がまったく違うからです。現時点では同メディアの医療マーケティングにおける効果がでる領域は、美容医療など限定的でした。

YouTubeを普段使いしていない人でも、若い世代がターゲットだから効果が出るだろうと想像できるかと思います。“限定的でした”と過去形を使っていますが、通信技術における革新のスピードが速い昨今では、一瞬にして状況が変わります。この原稿は地方都市のクリニックのコンサルティングを終えた帰路の新幹線で執筆していますが、その訪問先でたった今YouTubeの効果を実感したところです。そのクリニックは鼠径ヘルニアの日帰り手術に特化しています。メインターゲットは。若い世代でも女性でもなく50代以上の中高年の男性です。その世代に反響が出始めたということは、対象範囲が広がったということなのです。
とはいえ、そろそろだろうと想定していたことです。平成28年の総務省が行ったYouTube等の動画共有サービス利用状況調査の結果には、利用したことがあって今後も利用したい人で利用したことがない人でも今後利用したい人を含めると全体で79.4%でした。20代が92.5%で最も利用率は高く、40代までは全体の数字を上回っています。とはいえ50代でも76.5%、60代も62.5%と決して低い数字ではありません。またTwitterやFacebook、Instagramなどのソーシャルメディアの中で最も利用割合が高かったのもYouTube(2位はFacebook)でした。平成28年度版の情報通信白書からの引用、ともに3年以上前のデータでこの数字です。なお欧米諸国の多くではFacebookが1位ではあるものの、2位が僅差でYouTubeとなっています。アジア圏で韓国は各世代で50%を超え、情報通信先進国といわれているインドにおいては一番低い60代でさえ72.6%となっており、数年後の日本の姿を暗示しています。

GoogleとYouTubeの情報収集の仕方の違い

別の総務省で行った調査研究では、日本人のSNSの利用の目的に偏りがあることがわかりました。諸外国ではSNSを利用してよかったこととして、「しばらく連絡を取れていなかった人と再び連絡を取れるようになった」、「家族や友人との結びつきが深まった」という既存のつながりの強化を多くの人が挙げています。また「新しい友達や相談相手ができた」など、新しいつながりの創出をあげている割合も高くなっています。一方、日本人はともに低い数字になっています。一方で情報収集に関する内容で特に「趣味や身近な地域の話題など自分が興味ある情報を得ることができた」という項目のみが諸外国と同様の水準となっており、偏った利用目的が垣間見えてきます。

何を言わんとしているかというと、病気や医療、医療機関に関する情報についてはそれに当てはまり日本人のSNSの利用実態に被ってきます。つまり医療マーケティングにおいても今後SNSが媒体として重要な役割を果たすと考えることができるのです。特にYouTubeにおいては独自のアルゴリズムによってユーザーのニーズとの関連性の高い動画を表示させて、視聴者を見続けさせる環境を意図的に作り出しているところがこの媒体の凄さの一つです。例えば、Google検索では、キーワード検索によって情報が得られなければ、再度別のワードで検索し情報を能動的に探しつづけてかなければなりません。一方、YouTubeは関連動画によって、受動的に関連性の高い動画が表示されるため、発信側が意図してユーザーへ情報を発見される環境を作れてしまうため、広告媒体としての利用価値も高くなります。次回、将来的に病医院ではYouTubeを利用するのか述べていきます。
株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一

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