最近、クライアント先のクリニックに91歳のご主人と2つ下の奥様がご夫婦でご自身の認知症を疑って受診に来られたとのことです。初来院でしたので、来院の動機を確認したところご自身のスマートフォンからネットで探してそのクリニックにたどり着いたというのです。別のクライアント先の院長と71歳の男性がこれも同様に自身の認知症疑いで自らネット検索してきてとても驚いたといった話をしたばかりで、それが筆者が知るネット検索による来院の最高齢でしたが、今回最高齢大幅更新となりました。
また別の東京の城北エリアにあるクリニックでの出来事です。神奈川の湘南エリアに住まいのある患者が来院してきました。電車でも車でも2時間はかかる距離です。主訴は「虫刺され」です。もともと消化器外科がご専門で、外科を標榜しているものの生活習慣病など内科を中心とした市中の個人のクリニックです。患者に地縁もなく、“虫刺され”を専門としているわけでもありません。抗生物質を出して終わりということでもあり、そこまで重症度が高いわけでもありません。にもかかわらず、クリニックに2時間もかけて来院したのでしょうか。実は、クリニックのホームページに載せていた虫刺されに関する記事をネット検索でたまたま閲覧したからだということでした。稀ではありますが、インターネットが与える消費者行動における影響度が垣間見える事例ではないでしょうか。
この2つのケースで共通して言えることがあります。これらは決して偶然の賜物ではなく、これらのクリニックは、インターネットを経営戦略の一つとして上手に活用しているからこそ起きたことなのです。稀なケースは氷山の一角であり、海の下には大きな氷があることは、節理として理解できるのではないでしょうか。
筆者の場合、内科系クリニックの経営の安定度合を図るひとつの指標として、特定疾患療養管理料の算定件数を使います。これは生活習慣病などを主病とする患者についてかかりつけ医が計画的に療養上の管理を行うことを評価されて診療所では225点算定されるものです。かかりつけとなり離反も通常は少なく、定期的な来院需要があって点数も加算されるため、その割合が増えれば増えるほど収入は安定してきます。1年間の数字の変動は、地域差があるわけでもなく、大きく変わることもありません。この算定件数の動きを観察していくことでそのクリニックにおける現在から少し未来の集患力や経営安定度合などいろいろ把握できるのです。
冒頭のケース91歳の認知症疑いの患者が来院したクリニックは、開業して1年ですが、特定疾患の算定件数が月350件を上回ってきています。このクリニックは首都圏にあり競合医療機関も少なくないエリアにもかかわらず、とても高い推移を示しています。開業から早いほうで3年、時間がかかるところで6年以上かけて到達する件数です。アクセス解析のオーガニック検索キーワード(どんなキーワードでサイトを検索してたどり着いているか)をみれば、高血圧、高コレステロール(高中性脂肪血症や脂質異常症なども含む)、糖尿病、尿蛋白3+ 2+、尿潜血3+ 2+など含めて健診結果表に出てくるワードが並んでいます。つまり健診異常となったユーザーが検索しているという行動が見られます。そういった患者が来院につながってくることも350件超えといった数字のおおきな要因となっています。“虫刺され”ケースでは、アクセス解析によって“虫刺され”でのオーガニック検索流入を把握した上でコンテンツの一つに追加しました。現在、消化器系疾患のコンテンツを積み上げていくことで、ユーザー数が1日1500件になる日もあります。一般的には平均30~60件程度なので、その差は歴然です。やっただけ効果が実感できるところでもあるので、自院ホームページを見直してみてください。
株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一