医療業界は医療法によって他の業種と比べて多くの制限がかかっています。とはいえ他業種と同様に広告の目的はなんら変わりません。広告の目的とは、ブランドイメージを構築させるための広告もあれば、消費者購買行動を促すための反響広告もあります。他にも社会問題を啓発するような公共広告や政治的意見主張を訴えるための意見広告があります。とはいえ病医院経営で最も利用するものが反響広告です。つまりは広告とは患者を集めるために利用する目的で利用します。
広告を利用する場合には基本的には、お金がかかります。つまり寄付行為を除けば、それに対する効果を期待します。よってその広告にかける費用は広告によって反響を得たその経済的効果の度合いによって決められます。効果の度合いというものは、保険診療であれば公定価格なので標榜科や専門領域によって予算も決まってきます。例えば内科がメインの診療所では、院外処方であれば平均診療単価は5,000円から6,000円となります。しかも診療圏がせいぜい半径3キロ程度とターゲットとなるエリアも人も限定されます。その広告によって得られる効果が限定的になり仮に10万円の広告でも費用対効果の損益分岐点は、単純に広告宣伝費10万円を平均診療単価5,000円で割ったとすれば20人となります。このため年間の広告予算は50万円からせいぜい200万円程度になってきます。
また眼科など日帰り手術を行う施設は診療単価も上がってきます。例えば眼科ならば診療単価1万円前後で、手術1件当たりの12万~14万円くらいになります。そうなれば効果の期待値も大きくなるため年間広告予算も内科よりも高くなってきます。また、他の日帰り手術施設や病院など手術や入院機能を有するところにおいてさらに患者1人の単価も高くなるので、効果の期待値はさらにあがってきます。特に自費診療が主体の医療機関においては桁が1つ、場合によっては桁が2つほど増えてきます。
広告宣伝の予算については、標榜科や専門、昨日の違いによって異なりますが、目的はひとつです。どれだけの人に認知してもらい来院につなげられるかです。利用する広告媒体は、電柱、駅やロードサイドに設定する看板類、新聞や雑誌などの紙媒体、近年ではホームページなどWeb媒体と様々です。広告費用とその想定される効果とのバランスから媒体を選定します。ここまでは皆さんそれなりに力を注ぐのですが、広告の中身については意外と広告代理店がもってきたデザインをほぼそのままで利用されることが多く、変更したとしても好みや思いつきの範疇で変更する程度です。
規制で表現の自由度が少ないので致し方ないのかもしれませんが、せっかく同じ費用をかけるのであれば、効果も最大化したいと誰でも思うところです。デザインで効果をあげるためには、できるだけ目立たせれば良いのです。その集合体が“ネオン街”です。条例などの規制がなければ電飾で目立たせます。他店よりもとさらに目立たせるためにさらにギラギラとなってきますが、医療機関なので、同じようにはいかず節度が必要です。ただその節度というものがあいまいで線引きが難しいラインです。でも広告を出す以上は目立たせたいわけです。そこである線引きをしてみます。デザインに院長先生の顔を出すか出さないかです。今のところ、顔写真などを掲載するだけで確実に反響はあがります。とはいえ、躊躇する先生が大多数です。
節度の線引きも人それぞれなので、私から強くクライアントへ薦めることはありません。ただし印象の残り方はまったく違います。大手の某美容外科クリニックのTVCMでは、連日「私の信条は○○です」とご本人が出演しています。印象は確実に残ります。まだ広告に顔を出している院長が少数派だから目立ちます。大勢派からすれば節度がないとなるかもしれません。これが経営者としての判断なのではないでしょうか。
株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一