街中には、医療機関の看板で溢れています。デフレ傾向にある日本で各業種において経済停滞が叫ばれている中で、医業はいたって安泰です。医師免許がなければ何もできないので他の業種からの参入はありません。当然、海外からの競合参入もなく、皆保険制度の下での価格統制経済、高齢化による医療費の増大と、診療報酬の引き下げや消費税の将来的増税というネガティブな要因、一部地域の開業医の過多による競争環境の変化はあるにせよ全体としてみれば最も倒産リスクの少ない業であることに異論を唱える人はほぼいないでしょう。
しかも地方に行けば行くほど、業としての安定性や利益率は断トツです。それは今昔かわらず、今なお納税者番付があれば地方では間違いなく上位に開業医の名が連なっていくことでしょう。つまり、街中の看板に医療機関が溢れている理由は、一定の効果も期待でき、経済的な余力がある業種がほぼ医業しかないからです。だからこそ広告代理店関係者はこぞって医療機関に営業をかけていきます。スマートフォンがこれだけ普及してきていても、街中の医業の看板は減ることは当面なさそうです。
溢れかえったその看板の中には、明らかに10年以上も前に設置され、そのままの古くなった看板も散見されます。お金があるとはいえ効果のない看板は誘導(道案内)を目的とする看板以外はムダでしかありません、誰もが広告を出す必要がないと答えるはずです。しかしながら、効果の期待でききないような看板に対して広告宣伝費を支払い続けている先生も、実際には相当数いるということです。結局は、費用対効果の程度も良く分からず、自動更新で契約が続いてしまっており、また解約するのも面倒になってそのまま自動引き落としの固定費となっているのでスルーしてしまっているのだと思います。しかし、効果がないと明確にわかっていれば、大抵の先生は契約解除の手続きを行うはずです。ただ現実は朽ち果てそうな看板も存在しているのです。
出しっぱなしの放置状態にある広告の定期的な見直し、そして停止の意思決定を行うためには、広告宣伝費用対効果を知る必要があります。効果の算出方法については、まずは医療機関における患者の認知経路を調べます。つまりは、患者に対して「当院は何で知りましたか?」といった類の質問を行い、認知経路となる媒体毎に何人の新規患者がいたかを数えれば良いだけです。今時、問診表などに同様の質問を載せている医療機関も多くなりました。家族・職場・知人の口コミによるもの、医療施設の前を通って知ったケース、電話帳やフリーペーパーなどの広告、インターネット(Web検索)、そして電柱や野立ての看板などを列挙してのチェック式にしていることが一般的です。なお、より正確なデータを取るためには、電柱や野立ての看板などは○○交差点の看板など具体的な場所を画像付きで掲載しておくとこと良いでしょう。それを月毎にカウント集計しておきます。
広告宣伝費用対効果ということなので、人数だけでなく効果である収入面において評価する必要があります。そこで単純に測るには、自院の月の平均レセプト単価を調べます。つまり患者1人当たりの医業収入となり、例えばレセプト単価8,000円で1つの看板から5人の新規患者を獲得できたとすれば、8,000円×5人=4万円の効果と捉えることができるので、看板の広告宣伝費用が月額4万円を下回っていれば損益分岐点は超えているので費用対効果は出ていて継続となりますし、月額4万円を超えていれば、広告は停止といった判断になります。新規患者の翌月以降の再来院の確率は加味されていないので、新規患者の翌月から1年程度の来院率を調べて、新規患者数に再来院する既存患者数をプラスしておけばより現実に近い効果を算定できるでしょう。いずれにしても出しっぱなしやりっぱなしはムダなので見直ししてみてはいかがでしょうか。
株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一