最近巷で、ふるさと納税ということ言葉をよく耳にします。ただ納税とは言いますが、正確に言えば地方自治体への寄付行為なのです。とはいえ、自分の好きな自治体へ寄付することによって、自己負担額2,000円がかかるだけで、その地域の特産物や名産品他様々な返礼品が貰えます。また確定申告時に所得税の還付や個人住民税の控除が各自の収入による控除上限まで受けられます。
総務省の発表によれば、2015年度の寄付総額は1653億円でした。それに対して自治体の返礼品調達費用が632億円だったので、実質約4割の還付を受けられたことになります。仮に、年収2000万円で配偶者と子供がいる場合ですと、約52万円分の寄付控除枠が取れます(注:住宅ローン減税適用の場合など条件によって枠は変動します)。その4割となれば約21万円分が実質還付されることになるのです。自治体も税収があがるためより豪華な返礼品をそろえだしたこともあり、6割を超える返礼品もあります。ただ今年4月総務省から返礼上限を3割以下に抑えるように各自治体に求めましたが、いずれにしても、うまく活用できれば相応の節税効果を生み出します。
開業して利益がでてくると節税の意識が高まります。ただ残念ながら、個人事業(つまり個人)でできる節税対策の選択肢は限られます。その一つに、このふるさと納税があります。他の選択肢としては、例えば個人事業主や会社等役員のための退職金制度である「小規模企業共済」で最大月額7万円年間84万円の所得控除という税メリットを享受できます。
また「個人型確定拠出年金」も選択の一つです。いわゆる任意加入の年金資金づくりのための制度で、個人事業主ならば最大月額68,000円で年間816,000円所得控除されます。更に、この資金は、証券会社や保険会社、銀行などで運用され、その運用益は非課税扱いです。なお加入期間10年以上で受け取りが60歳以降でなければなりません。受け取りの際には退職所得控除も受けられます。
前述の3つの制度は、税引き前所得の運用することにおける税メリットを取るものです。それらとは違い、出た利益について非課税枠が適用できる制度があります。小額投資非課税制度(通称NISA)で、国民の保有する預貯金を投資に回してもらうことを目的として2014年1月より始まりました。これは年間120万円以下の投資で得た配当金や売却益が、通常利益の約20%課税されるところが非課税となります。ちなみに、非課税対象が利益120万円ではありません。120万円の購入分に対して得られた利益です。例えば、120万円で株を購入し300万円で売れた場合に180万円の売却益はすべて非課税です。通常であれば約20%課税なので約36万円の税メリットを得られます。
また、いろいろ注意点があります。非課税の期間は5年となります。期限がきたらその株は売却するかNISA用口座から課税される一般口座に移さなければなりません。その時に当初120万で購入した株が値下がりして50万円となっていた場合、損切したくなければ一般口座に移し保有し続けることになりますが、なぜだかそれを50万円で新規購入したとみなされてしまうのです。株価が120万円に戻りそれを売れば70万円の利益が出たとなってしまい、実質儲けはないのに約14万円課税されます。
更には一般の口座からの投資での損益は相殺できますが、NISAでは通算できません。例えば通常ならば100万円の利益と損失であれば損益0円なので税金はかかりません。しかし一般口座で100万円の利益を出した一方で、NISAで100万円の損失が出てしまっても相殺されないため、利益100万円に対する課税なので、NISAにしたことで税金を多く支払うことになってしまうのです。何でもメリットがあればデメリットもあります。それらを理解した上で所得控除枠や非課税枠を活用しながら資産形成してみてはいかがでしょうか。
株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一