Column

不健全経営のすゝめ

※柴田雄一が連載中の『卸ニュース「病医院経営のチェックポイント」(IQVIAソリューションズジャパン(株)発行)を転載した記事となります。

スマートフォン革命 (97)


急速に発展した携帯電話

近年の通信デバイスの発展は目覚ましいものとなりました。筆者が高校生の頃までは、通信手段と言えば固定電話や公衆電話でした。大学入学の頃にバブル絶頂期を迎え、肩掛けの移動電話や自動車電話がお目見えし、大学卒業直前のバブルが完全にはじけ飛んだ頃にポケットベル、就職して数年後に携帯電話を持ち始めました。その頃はまだメールサービスはありません。

筆者は、1990年代後半からミレニアムにかけて3年ほど海外の大学院に行っており、留学から日本に帰国した時には、携帯電話に関しては完全に浦島太郎のような気分だったことを今も鮮明に覚えています。せいぜい2行程度のモノクロのドット表示の画面で、手のひらくらいの長さだった携帯電話が、帰ってきたらいきなり液晶カラーで、しかもインターネットにも接続可能なうえ、折りたたみ式で手の中にすっぽり隠れてしまうくらいダウンサイズされているのですから驚きでした。

その後も2004年にはおサイフケータイ、2005年にはワンセグテレビを搭載し、2007年にはついに、アップル社から初代のiPhopeが発表され、翌年から日本国内で販売開始されました。それをきっかけにフィーチャーフォンといわれる既存の携帯端末からスマートフォンへのシフトが急速に進み、現在に至っています。

これによって、以前はパソコンを所有していることが必要だったインターネットへのアクセスが、誰でも簡単にできるようになりました。もちろん、フィーチャーフォンの時代でもアクセスは可能でしたが、画面も小さく、利便性はあまり良くありませんでした。しかし、スマートフォンになり画面のサイズが劇的に大きくなり、パソコンとほぼ同じことが可能となりました。さらにはiPadなどのタブレットといわれる画面の大きな端末も誕生し、今では多くの人が利用しています。なかにはパソコンと同じような使い方が可能な端末もあり、各端末の境界線を埋めるように新機種が発売されているのが現状です。

スマートフォンと医療機関の決定

マーケティングの領域において、この技術発展が消費者の購買行動を大きく変えていきました。現在、音声認識によってテキストを入力せずに気軽に検索が行え、目的の情報へ到達することができるようになっています。例えば、飲食店に行きたければ、食べたい料理などを音声認識させれば、GPS機能等によって自分の位置から近い店が地図上に表示され、しかもお店の評価や口コミ情報も同時に得ることができてしまいます。お店が決まれば、スマートフォンがお店までの経路や交通手段、そしてナビゲーションまでしてくれます。

実は、患者が医療機関を決定する際にも同様の行動をします。例えば、“小児科”で検索すれば、近隣の小児科が地図上に表示され、距離やホームページのリンク、そして一部口コミも表示されます。特にプライマリケアを中心とする医療機関は家から近いところを選ぶ傾向がありますが、他にもインターネット上の複数の情報をもとに決めていくことになりますので、スマートフォン対策をすることでこの患者層を取り込むことができます。「当院は内科で高齢者ばかりだし、スマートフォンなんて持っていない層だから関係ない」と思われがちですが、ホームページを持っていない内科クリニックでさえも、調べてみると新規患者の1~2割はインターネットで検索しているものなのです。
総務省の調査ではスマートフォン利用率(2014年)は、全年代合わせて62.3%、20代が94.1%、30代が82.2%、40代が72.9%であり、内科のターゲットとなる50代は48.6%、60代でも18.3%となります。70代以降のデータは見当たらなかったのですが、その世代の方は医療機関を新たに探す際に家族から情報を得ることも多く、その家族の情報源は結局インターネットであるため、「スマホを持っていないから関係ない」とも言い切れないのです。まずは自分でスマートフォンを積極的に使ってみることが近道かもしれません。
株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一

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