自動精算システム、オンライン診療、AI問診、その他様々なデジタルツールが誕生しています。またその中でまだまだ実用には耐えられないものも少なくはありませんが、一方ですでに実用性の高いツールも続々出てきています。とはいえ、人は現状維持を好む生き物だとも言われ、その現状に特別不満を感じていなければ、新しいモノやコトを積極的に導入する人は少数派です。
マーケティングの世界では新たな製品や技術、サービスなどのマーケットにおける普及率を示すイノベーター理論という考え方があります。
・イノベーター(革新者):2.5%
・アーリーアダプター(初期採用者):13.5%
・アーリーマジョリティ(前期追随者):34%
・レイトマジョリティ(後期追随者):34%
・ラガード(遅滞者):16%
イノベーターという「革新的」「新技術」「最先端」といったところに反応するような情報感度の高い好奇心旺盛な層から徐々に受け入れられて次のアーリーアダプターなどと普及の過程を経ていくというものです。マーケティングではこの理論に基づき戦略やライフサイクルに関しての検討を行うことが良いとされています。余談ですが、アーリーアダプターまでが初期市場と呼ばれ、アーリーマジョリティからがメインストリームで、そこには大きな溝があり、そこを越えなければその商品等は普及しないというキャズム(溝)理論があります。ご自身がどのタイプに属するのかは、おそらく皆さん何となくわかっているのだろうと思います。
前回、インターネットとの付き合い方は、世代によってその距離感が変わってきて、それを決めていく要因が多感な若い時期(30歳くらいまで)に利用したコミュニケーション端末に影響を受けているという筆者が立てた説について触れました。高齢の方でもスマホを使いこなしSNSや動画配信サービスなど活用しているイノベーターもいらっしゃいますし、その逆もあります。とはいえ、やはり大勢はこの説に準じていると考えられます。
更に前の連載は1970年生まれの筆者の経験談をお伝えしました。大学時代の通信端末はポケベルが流行り、大学卒業くらいから携帯電話が普及期に入り、またパソコンも大学時代でもマッキントッシュとNECのDOSというコマンドで動くようなパソコンで卒論を仕上げたことや卒後にWindows3.1が登場し、ワープロが主流でしたが筆者が上に掛け合い勤務先の会社に導入したが、上司は筆者が勤務していた5年間はずっとワープロを手放さなかったというところで終わりました。
退社後の20代後半で留学しました。日本ではインターネットにつなげるときには従量課金制でまだまだ黎明期とも言える時代でした。一方で留学先のアメリカではすでに定額制だったこともあって、インターネットの恩恵を早く享受できました。今は当たり前にオンライン会議を行っていますが、実は1998年頃にすでに、日本とアメリカ間でいわゆるインターネット経由のテレビ電話を使っていました。当時は、珍しく留学先で日本の技術はすごいと皆に驚かれました。一方2021年に日本に帰国した時は、携帯端末の画面がカラーになっていて、またiモードなどといった機能が付加されており、アメリカよりも進んでいて驚きました。
まだまだインターネットの黎明期であったが携帯電話も若い頃から身の回りにあり、またコミュニケーションを行うに当たって重要なキーボード入力への抵抗感もなく受け入れられたこと、更にインターネットのメリットも享受しやすい普及期の時代背景に生きたのが、まさに我々世代なのだと思います。筆者の上の世代よりは明らかにデジタルという新たなイノベーションに順応できた世代なのかもしれません。当然ながら下の世代ともその逆も感じます。年齢的に自分自身保守的になってきている気がします。だからこそ、感度を上げて世の中が変わっていることに気づけるよう、強く意識している今日この頃です。
株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一