Column

不健全経営のすゝめ

※柴田雄一が連載中の『卸ニュース「病医院経営のチェックポイント」(IQVIAソリューションズジャパン(株)発行)を転載した記事となります。

論理的思考術① (67)


「論理的思考術」は便利な術

前回「うまい、やすい、はやい」という牛丼店の話を取り上げながら「論理的思考術」に触れました。近年は書店の棚に同類の書籍が数多く並んでいます。その著者の大半は経営コンサルティングを生業としている人たちです。論理的思考術が一番使われている仕事だともいえます。彼ら(筆者も含めて)経営コンサルティングの主な仕事とは、クライアントの抱える問題や課題に対してソリューション(改善・解決のための策)を提案し、それを実行してクライアントが望むアウトプット(成果物)を示すことです。

もちろん画一的ではなく、戦略策定のみであったり、より現場に近いところでの実行を示すことであったりと、仕事内容はコンサルタントの専門領域やクライアントの業種業態によってさまざまです。とはいえ、ベースはソリューションを売っている仕事です。コンサルタントは、ソリューションとアウトプットがあって、それに見合うフィー(報酬)を受け取ります。案件単位の定価報酬、時間当たりの報酬、成果報酬など、どのような形にせよ、継続的に仕事をするためには適切なソリューションとアウトプットを提供し続けなければなりません。それは患者と医師の関係と同じです。患者の悩みに対して、医師は自分の有する専門知識と経験で診断と治療を施し、治癒や改善させ続けなければ、継続的に患者は集まってきません。
いずれにせよ、ソリューションを売る仕事において、論理的思考術はとても便利な“術”となります。論理的思考術とは、複雑な事象や現象を論点設定しながら単純化させ、論点を合わせて、誰が見ても分かるように構造化し、それを共有化する技術です。構造化とは、例えば、医業収入の構造は「患者数×平均診療単価」となります。さらには患者数を新規と既存、年齢別、疾病別などに分解できます。いわゆる、数学でいうところの因数分解です。一つの因数がどのように答え(結果)に影響するのかを理解できてしまえば、答えをコントロールすることが可能です。つまり、因数分解と展開を繰り返す作業のようなものです。これで定理(ルール)が構築され、皆が納得するものとなり、周りの人たちへの説得力を生み出します。同時に協調も得られ、多くの人が同じ方角を向きながら実行することが可能となるわけです。

着想は文化背景にあり

そもそも、この論理的思考術の着想は欧米の文化背景にあります。特に発信元は合理主義といわれる米国であり、そのメジャーな経営コンサルティング会社です。米国は、移民によってつくられた国です。標準語は英語ですが、移民の国ですから、それぞれの母国語も使われます。メキシコ国境に近い町であれば、英語でなくスペイン語を話す住民の方が多いこともあります。米国で生まれてもコミュニティーの中で暮らしていれば、英語を話す必要がなく、アメリカ人でありながら英語が話せないということもしばしばです。日本人は、皆日本語を話します。また識字率もほぼ100%です。しかし米国では、生まれた環境、住みはじめた時期、貧富の差、文化の差によってコミュニケーションギャップが生じます。そのギャップを論理的思考術で埋めていく必要が生じてくるのです。

では実際に、論理的思考術とは何なのでしょうか。それは三つの思考と三つのスキルで構成されます。思考術には、「仮説思考」「論理的思考」「ゼロベース思考」があります。またスキルは、「ロジックツリー」「MECE」、そして「フレームワーク」です。それぞれの説明は次の機会にしますが、これらを駆使していくことによって、ソリューション設定の一手となります。「ソリューション」と横文字を使ってしまうと仰々しくなりますが、日々の仕事の中でも大なり小なり問題や課題が出てきて、それらに対処しているはずです。日常でも使える術の一つでもあるのです。もし、これらの中に馴染みのない言葉があれば、新たな“術”が得られる可能性が高いといえるでしょう。

株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一

CONTACT

お気軽にご相談ください