「お・も・て・な・し」
何度も繰り返しテレビ画面からこのシーンが流れてきました。そう、2020年の夏季オリンピック開催地として東京が選ばれました。開催の是非はともかく、この決定で多くの人にとってもさまざまな想いが去来したのではないでしょうか。1964年の東京オリンピックを知る世代の人は、その頃の自分も同時に想いが蘇ったはずです。
私自身はその後の世代ですから、過去には遡れません。ただ、自分の「未来」を感じた瞬間ではありました。その未来とは7年後の自分です。つまり、20年の東京オリンピック開催時の自分とその周辺環境です。その中に自分の会社の7年後、二人の娘の7年後、妻や両親の7年後など、この7年という節目が具体的に示されるきっかけとなりました。東京圏とその他の地域では温度差があるかもしれませんが、周囲の人たちは同様にこの「節」を感じたといいます。
元来、人間は「節」が必要な生き物です。ただ漫然と日々を過ごすことを良しとしないからこそ人は暦や節分をつくり、クリスマスなどの記念日を祝い、人生に節を付けているのだと思います。病医院の経営においても節があります。経営者にとって最も重要な節の一つとして、年度の決算日(月)があります。一年間の一つの結果となって数字に現れるために、自分の過去と未来をつなげる節となります。また、確定申告も自分の収入などについて強く意識する一瞬です。
人材領域のマネジメントにおいては、この節を活用することも重要視されています。過去と現在、そして未来を意識させ、それらをつなげていくことで、経営者や職員にとっての動機付けになってきます。一般営利法人では四半期決算を採用するところが増えているのも、そんな理由があるからです。医療法人では、まだ採用するところはあまり見かけませんが、経営を意識させる上では今後取り上げるところも時代の流れとしては出てくるでしょう。
「節」は何も収支の話だけに限ったことではありません。運営面に関する会議や定例の症例検討会、学会認定試験日など、さまざまな節が経営においては存在します。その節を意図的に設定することで、そこに人の意識を向かわせることができれば、組織体として大きな力となり得るのです。
病院など組織が大きくなれば、月単位でこのようなさまざまな会議や行事が設定されることでしょう。しかし、個人のクリニックなどでは、「いつも皆同じ顔を突き合わせているから」「場所がないから」「命令はいつも直接院長が出しているから」などと、会議などを設定しないケースも多く見られるようです。
仕事自体はそれで動きますが、その流れの中では目の前の仕事に追われて手一杯であることが多く、その中で一瞬でも立ち止まって自分を振り返り、未来を創造することはなかなかできません。かなり困難なことではないでしょうか。経営管理において、節目がないことは不健全なことだともいえます。もしそうであれば、積極的に節目づくり行ってみてください。
さて、7年後の自分に話を戻します。その「自分の捉え方」は世代(年齢)によって見え方が全く違ってきます。小学生など若い世代ならば、オリンピックに競技者として参加する立場で想像できます。一方、テレビのインタビューではあるご老人が「自分がそこに存在しているかどうか分からない」といったことを述べていました。つまり、自分のエンディングを7年後の自分によって意識することになったのです。
病医院経営においても、開業して間もない時期なのか、経営的に安定期に入っているのなどによって、7年後の自分(自院)の見え方が変わってくることでしょう。それを踏まえて、いったん立ち止まり、7年後の自院を考えてみてはいかがでしょうか。
株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一