Googleという名称は、一度くらいは耳にしたことがあるかと思います。アメリカに本社をもつインターネット関連サービス企業です。スマートフォンの基本OSのAndroidもこの会社が開発していることもあり、AppleのiPhone以外のスマートフォンを利用している人は、知らずともGoogleの検索エンジンを使っているかと思われます。他にもGmailというメールサービス、Googleマップという地図サービス、動画視聴のYouTubeなども含めて多くのサービスを展開しています。
これらサービスは基本的には無料で利用できます。何も慈善事業ではなく、Googleは別の何かで当然ながら収益を得ています。その収益源の多くはWeb広告と言われています。AdWords(アドワーズ)という言葉は、ご存知でしょうか? ご存じでない方も多いかもしれませんが、これはクリック課金型広告というものです。パソコンやスマートフォンからGoogleの検索エンジンを利用して検索すると結果が表示され、その検索結果画面の上部や右側部分に【広告】というロゴが入り表示されます。これをクリックすると広告主が都度課金されます。課金される単価はキーワード毎に入札で決まります。その決まり方は複雑なので詳細は省きますが、競争相手が多く人気のある(検索数が多い)キーワードの単価は高くなります。これを執筆している時点で単価(推奨入札単価)を調べてみました。
例えば、医療関連では「美容外科」というキーワードは1,055円、「美容皮膚科」は少し下がって710円となっています。また、彼らの主要メニューの一つである「脱毛」では1,489円と高くなります。「脱毛」での検索数は「美容外科」と比べて10倍以上(ちなみに脱毛で月平均9万500件)となっていることもあり、競合する広告主も多いため、単価は上がってしまいます。美容系や自費診療をメインとする医療機関では、毎月数十万単位の広告料を支払っており、規模が大きくなれば数百万単位にもなってきます。
保険診に関するキーワードでも単価が出ています。例えば、「内科」121円、「外科」152円、「小児科」202円、「皮膚科」165円となっています。やはり、子供を持つ親世代はインターネットの利用率が高いこともあって、小児科の単価が上がっていると思われます。病名等の例も挙げてみます。例えば、「下肢静脈瘤」は253円です。対象病名における日帰り手術の実施施設や病院などが利用しており、競合も多いために単価も上がります。また、白内障や鼠径ヘルニアも日帰り手術ができる施設が増えて競争状態になっているため、広告を利用している医療機関が増えています。ちなみに「白内障」が127円、「鼠径ヘルニア」で154円となっています。他にも検査や健診関連では、「内視鏡検査」65円、「マンモグラフィー」106円、「人間ドック」175円、「乳がん検診」150円でした。
しかしながら、患者を増やすために広告を出せば良いかといえば、必ずしもそうではありません。広告を出せば多少なりとも効果は出てきますが、適切な費用対効果が得られるかといえば、対象によって違いが出てくるからです。例えば、単価の高い自費診療や日帰り手術を対象とするのであれば、積極的に広告を利用するべきです。広告によって鼠径ヘルニアの患者が1人増えれば、50万円近い収入が見込めます。よって患者1人を集めるために費やすことのできる広告宣伝費用もそれなりにかけられます。一方で、一般的な風邪症状などでは診療単価は5000円程度となり、広告宣伝費にいくらも費やすことはできません。つまり、効果が出てもそれを上回る費用となってしまう可能性が高いため、内科などのプライマリケア中心のクリニックなどでは利用が限定されてしまいます。よって、糖尿病、高血圧、喘息、花粉症、アレルギーなど(単価は全て100円以下)に絞って、試験的に利用してみて費用対効果を測ることから始めていくのが良いでしょう。
株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一