Column

不健全経営のすゝめ

※柴田雄一が連載中の『卸ニュース「病医院経営のチェックポイント」(IQVIAソリューションズジャパン(株)発行)を転載した記事となります。

今だからこそ見つめ直おす決算書③(210)


不安にならないための方法

新型コロナウイルスの影響による減収により、大半の病医院では様々な対策を強いられています。そのために資金調達や固定費の削減、増収策など緊急的な対策を行っていることでしょう。またこのような未曾有の事態が起き、これまでにない減収という事象が発生すると人は不安を覚えます。その不安を少しでも緩和させるために必要なことは、自身の現在地を知ることと未来を描くことです。自身の現在地を知るということは、2つあります。ひとつ目は、到達地点となる設定している目標に対してどの位置にいるのか、またその到達までの経路に対してどの程度のズレが生じていているのかというまさに現在地の把握です。ふたつ目は、自分自身の把握です。つまり、現在自分はどのような体力(からだの能力)を有しているのかを、正確に理解することです。いくら道筋があっていても体力がなければ目標地点や中継地点までも進めないかもしれません。

そこでまず自身の体力を経営に置き換えて、貸借対照表を用いて、そこから体型でイメージできるよう筋肉質型、痩せ型、肥満型の3つに分類してみようということに前回なりました。貸借対照表をご用意いただきながら読み進めてみてください。収入と支出が示されている損益計算書に比べて、資産の状況を表す貸借対照表は、いまいち理解できないという人が多くいます。そのポイントはバランス、つまりは比率をみていきます。体型をみる場合にも同様です。貸借対照表は通常、左側に「資産の部」、右側に「負債の部と「資本の部」となり、右左が同じ金額となっています。ちなみに青色申告決算書では資本の部が「資本」、その他のケースでは「純資産」などとなっています。この資本の部で、青色申告決算書では「事業主貸」や「事業主借」、「元入金」といった聞きなれない項目が出てきます。前者2つは事業用の口座などからプライベートで使用したお金や、プライベートのお金を事業用として使ったお金を表し、プライベートのお金の動きは事業とは別のするための特別な勘定科目です。

自己資本比率は安定性の指標

「元入金」とは株式会社で言う資本金のようなものです。事業の元手となる資金と考えればよいですが、資本金と違い事業による税引き後に残ったお金(純利益)も「元入金」として計上されます。つまりこの「資本の部」とは、誰に縛られることなく自由に使えるお金とも言え、自己資本という言い方もします。一方で「資本の部」の上に位置する「負債の部」は他人から借りたお金なので他人資本とも言います。他人資本よりも自己資本が大きければ大きいほど体力がある状態となるのです。それを「自己資本比率」で『自己資本比率=「資本の部」÷総資本×100』※総資本(資産の部)=「負債の部」+「資本の部」となり、ここで体型判定を行ってみます。自己資本比率は60%以上が理想と言われているため次のような基準になります。

筋肉質型:自己資本比率≧60%
痩せ型 :60%>自己資本比率>20%
肥満型 :20%≧自己資本比率
標榜科や規模、機能その他のバランスによって一概には言えない部分があり、健診結果と同様で一つの項目の基準から外れたからと即病気ということではなく、目安としてとらえてください。とはいえ、自己資本比率が高いほうが、減収による倒産リスクは明らかに低くなることは間違いありません。自己資本比率を増やすためには、本業の純利益を増やし内部保留していくか、経営者からの資金を増やすかです。経営者からの資金といっても開業医であれば、主に本業からの収入ですので結局純利益を増やすことが必要なのです。また余計な資産を持たないようにし、かつ借入金の返済を進めていくことで自己資本比率は高くなります。
ただしこれは安定性だけでの話です。自己資本比率が高いということは、将来への投資(例えば設備投資)などが行われていないということになります。経営戦略に照らし合わせながらバランスを保っていくべき事柄なのです。
株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一

CONTACT

お気軽にご相談ください