Column

不健全経営のすゝめ

※柴田雄一が連載中の『卸ニュース「病医院経営のチェックポイント」(IQVIAソリューションズジャパン(株)発行)を転載した記事となります。

老後の資金と確定拠出年金① (117)


老後が短い(?)医師の老後資金への意識

筆者が開業相談を受ける際には、借入の返済設定期間や将来の資産設計を計るために、どれくらのご年齢まで仕事をしているであろうか伺います。多くの先生方が明確に何歳までといった計画があるわけではないため、少しばかり考えたところでほぼ65~70歳くらいまでと答えます。

実際に、医師は他職種と比べると5年から10年は長く仕事に携わります。また一般の多くの人たちは、60歳を過ぎると求人数も収入もガクンと落ちますが、医師は今のところ求人数も収入もそれほど落ち込みません。よって仕事をリタイアしたいわゆる老後といった機関も短く、経済力もあるため、老後のために資金を貯めておきたいという意識になりにくく、計画的に準備をしているという先生にお会いすることは多くありません。
公的病院や大きな民間病院などの勤務医であれば厚生年金や退職金制度などが整っているため、あまり意識していなくても、相応の準備ができます。しかしそうではない場合には、大半の先生は医師国保といわれる保険に加入しています。医師国保は通常のものよりも月額負担が少なくなっています。なぜならば年金部分が考慮されていないからです。一方で厚生年金の場合は、収める半分は雇用主が負担してくれます。医師国保は、医療費については面倒みるけれど、老後の準備は自分でやってくださいねという制度となります。
老後資金を貯めるためるために、公的年金制度や貯蓄型の民間保険、株、不動産投資、その他金融商品、定期預金やタンス預金までとありとあらゆる手段がありますが、その支払原資は2種類しかありません。税引き後の所得か否かということです。個人開業医を想定すればクリニックの所得に対して所得税と住民税が課税されることになり、所得金額に応じて約15~50%の課税がされた後の手取り金が原資となります。一方では税引き前の所得を原資にできるものがあります。つまり支払った金額が確定申告の際に所得控除となるものです。その制度の代表格として「小規模企業共済」と「個人型確定拠出年金」です。

確定拠出年金のメリット

確定申告書の「小規模共済等掛金控除」という欄が空白であれば、これらの制度を利用していないということです。小規模企業共済について、以前本連載で取り上げたので、今回は「個人型確定拠出年金」について述べてまいります。この掛金全額が非課税となる年金制度が今年に5月に「確定拠出年金法等の一部を改正する法律」が可決・成立しました。専業主婦や公務員も対象となり、施行が始まる来年1月1日前後は、「確定拠出年金」、「401(k)」といった言葉を頻繁に耳にするかと思います。ちなみに401(k)とは、本制度の見本となった米国法の条項名で日本版401(k)とも言われます。

掛金の上限は、開業医の場合月額68,000円で、年額にすれば816,000円で税率が50%ともなれば408,000円もの節税メリットを受けます。しかも、このお金は運用されるため、運用益を得られることもあります。その利益も全額非課税となります。更には年金を受け取る際もさすがに全額とはなりませんが税金の控除を受けることができます。ただ一方で運用益が出るということは、損も出る可能性があるということです。運用先も商品も加入者自身で選ばなければなりません。預金や保険を用いた元本を確保したタイプのものであれば損をするということはありません。ただし、運用益が非課税という本制度の恩恵を受けることができないので、これはこれで本制度を最大限に活かせてなません。ただ他の金融商品と違って運用益がなくてもほぼ確実にメリットになります、
ここからは個人の考え方になるのですが、せっかくならば高い利回りを期待しても良いと思うのです。その場合には、確定拠出年金を通じて購入できる投資信託でポートフォリオを組むのですが、あまり手を出さないほうが良い商品があり、次回その商品選びのポイントをお伝えします。
株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一

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