桜の季節となりました。桜といえば入学式のような“始まり”を連想します。しかし、温暖化の影響もあって桜の咲く時期が近年だんだんと早まり、卒業で“終わり”といったものを連想する人が関東以南の若い世代で増えているということです。いずれにしても、この季節は切り替わりの時期で、病院経営者にとっては決算というイベントを迎えます。ちなみに、私が経営する会社も3月期決算で、決算書類の作成や提出はできるだけ自分やることにしています。税理士への支払いを渋っているわけではなく、経営コンサルタントとしてのカンを磨いているのです。医療も同じだと思いますが、勉強だけで得る知識は限られています。実際に自分で数字をいじり、さらに自分が本当にその立場となって知り得る知識は知恵となります。
当然、税理士や会計士の資格はないので、税務相談でお金を得ることはできません。しかし、カンを磨いているそのお陰で、院長先生とは経営者の実体験として生々しいお話をすることができるのです。税理士や会計士で知識はあっても、経営者としての経験がないサラリーマンならば、経営者として何が必要な情報なのかまで実感がわかないのかもしれません。
とはいえ、自分で決算書類を作ることは簡単ではありません。また、財務諸表に対して苦手意識をお持ちの院長先生も少なくありません。決算書を開いたこともない先生もいれば、勉強しようと参考書を買ってはみたものの、挫折する先生も何人もいらっしゃいます。本だけの知識では限界があるので、それも当然といえば当然なのかもしれません。
あるとき、顧問先の院長先生から、“決算書アレルギー”で完治は難しそうなので、どう付き合っていくかという相談がありました。実際に経営者としては、経営状況を把握する上で決算書などの書類は見ないでよいはずがありません。しかし、通常目にする決算書は税務会計といわれるものであり、税金を徴収するために必要な書類なので、理解するのがそもそも難しいものなのです。極言すれば、この会計制度(仕組み)は税金を徴収するためにつくられています。そうしたこともあって、収入と支出が盛り込まれた損益計算書の数字と、実際の通帳や手持ち現金の額が全く違ってくるため、余計分かりにくさを助長しています。
例えば、こちらから請求書を発行した時点で収入となります。また、保健診療をした時点で実際には患者負担分のみしか現金が入ってこないにもかかわらず、保険点数分全額が収入として扱われます。さらに、一定金額以上の医療機器や設備を購入しても、その時点で損益計算書にはそのまま反映されません。つまり、減価償却の手続きがとられます。減価とは価値が減少することで、償却とは何年でその価値がなくなるかを表し、損益計算書にはその年に減少した価値分を計上します。100万円の設備が法律で決められた償却年数5年とすれば、100万円✕90%÷5年=18万円となり、毎年18万円が経費として扱われます。90%というのは、5年で価値が0にならず、5年以降も100%-90%=10%の価値が残るという考え方です。
このように経費扱い額が減るので、その分利益が出るようになり、利益に対してかかる税金が高くなるということになります。こうしたことも含めて会計が分かりにくくなり、“アレルギー”になってくるのかもしれません。
その他にも損益計算書には借方、貸方、経常利益、営業利益など専門用語が並びます。決算書類には、決算日現在の資産状況を示す貸借対照表や、1年間のお金の動きを示すキャッシュフロー計算書もあって、より複雑に映ります。ただし、会計の仕組み自体はよく考えられたもので、見る人が見るとその数字から読み取れる情報がたくさんあるものなのです。顧問税理士の先生方に見るポイントだけでも聞いてみてはいかがでしょうか?
株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一