Column

不健全経営のすゝめ

※柴田雄一が連載中の『卸ニュース「病医院経営のチェックポイント」(IQVIAソリューションズジャパン(株)発行)を転載した記事となります。

マルチタスク(269)


クリニックで求められる能力とは

前回の連載では適性検査について取り上げました。ちなみに適性検査を実施しなくても職務経歴を見ながら面接をしていくことで、ある程度その人の技能(これまでの業務経験や訓練などによって身に着けた技術的な能力)は評価できるはずです。一方では、メンタル面における傾向やストレス耐性については履歴書や面接だけでは、評価することは不可能だと筆者は考えています。だからこそ検査自体が万能とは言わないまでも、適性検査を通じてそれらが把握できるならば活用の意義があると述べました。

しかしながら決して高価ではないものの毎回検査費用がかかります。また検査に必要な設問に答えてもらうことになるのですが、数十分の時間を要するため相手にも相応の負担を求めることになります。そのため気軽に適性検査を導入しようとなりにくいのものです。しかし効果的な面接、つまり業務の適性がマッチしており、優秀でかつ辞めない人材を採用するための面接をしたいと誰しもが考えます。でも、そう簡単にはいきません。しかも限られた面接時間です。そこで筆者の場合、職種や就労環境などに応じて技能や能力、キャラクターなどに関してポイントを絞って見抜くことに注力するように心がけています。
例えば、市中にある一般的なクリニックを例にあげて説明します。このような小規模の組織の場合、限られた人員で仕事をこなさなければなりません。そこで求められる技能は、深さよりも広さです。なお技能において採用時点で必要レベルに仮に達していなかったとしても、研修や業務経験によって業務遂行可能なレベルまで引き上げることはそこまで難しくないと考えています。一方後天的に備わることが難しい能力(物事を成し遂げることのできる力)の場合にはそうはいきません。クリニックにおいて技能も広さが必要なように、能力においても複数のことを同時にこなしていく業務がとても多くなります。それは、マルチタスク能力です。

マルチタスク能力を測る方法とは

マルチタスク能力とは、複数の作業を並行して同時に行うこと、もしくは短期間で切り替えながら同時に遂行していく能力のことです。なお一つの作業に集中させていくシングルタスクのほうが、パフォーマンスは高くなります。ただ、クリニックの業務内容を見れば、一人何役も求められ、また受動的な仕事も少なくありません。例えば、受付を行い、次には会計処理、その最中にも電話が鳴って対応し、ようやく電話対応が済んだと思ったら、待合室の患者からあとどれくらい待つかと不満顔で声を掛けられるといった場面は日常茶飯事です。

そこでどうすればマルチタスク能力が面接の中で測ことができるか考えました。なお面接という場面は、面接を受ける側は通常緊張状態にあります。よってこの非日常という場面ではなく日常の場面に引き戻して素を引き出すようしたいところです。そこで日常におけるマルチタスク能力が問われる場面でどう行動するかを語ってもらうようにしました。その場面とは、家事や育児です。クリニックの場合は、採用する相手は、女性が大半を占めます。また最近の応募者の傾向を見ると子育て世代もしくは子育てが終わった世代の応募が圧倒的に多くなっています。
そういったバックグラウンドを持つ方には、育児の苦労話につながるような話題を振っていきます。簡単に話を聞いた後に、改めて家事と育児が重なり合ったときにどうやって対応しているのか(していたのか)をたずねます。経験的にマルチタスク能力が備わっている人ほど、その場面で自分なりの対処方法や考え方についてスラスラと具体的に語ることができます。これは常日頃から意識して行動できているからなのだと思います。もちろんこの能力より重視する能力もあるかもしれません。いずれにしても効果的な面接のためには、あらかじめ自院にとって必要な技能と能力とその優先順位をつけてから面接に臨んでみてください。
株式会社ニューハンプシャーMC
代表取締役・上席コンサルタント 柴田雄一

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